高齢者にも優しいおせちの選び方と簡単レシピをご紹介

「おせち」といえば、お正月を彩る日本人にとって欠かせない行事食ですね。

しかし伝統的なおせちの品々の中には、例えば田づくりや煮しめの具材である蓮根やごぼう等、噛む力や飲み込む力が弱くなった高齢者には食べにくいものもあります。

自宅介護や病院、施設からの一時帰宅等によってお正月を自宅で過ごす高齢者にとっても食べやすく、見た目も楽しめるおせちが用意できたら素敵だとは思いませんか?

また、最近ではおせちをインターネット等で購入するといった家庭も増え、おせちの内容も現代風にアレンジされ、見ているだけでも楽しいものばかりです。

おせちを自宅で作る場合も、購入する場合も、高齢者も楽しんで美味しく食べるためには食材選びや調理の工夫、その人に合った食形態のものを選ぶといったポイントがあります。

今回本記事では、おせちを作る際や購入する際の選び方のポイントや、年に一度のお正月を高齢者も楽しむための工夫についてお伝えします。高齢者にも優しいおせちで、一年の始まりをお祝いしましょう!

高齢者にも優しいおせちを作る際のポイント

高齢者にも優しいおせちを作る際のポイント

冒頭でお伝えした様に、伝統的なおせちの中には硬くて噛みにくい等、高齢者にとって食べにくい料理もあります。

自宅でおせちを作る場合は、食材の選択や調理法の工夫によって各料理が持つおめでたい意味合いはそのままに、高齢者にも食べやすいおせちにアレンジする事ができます。

ここでは、高齢者にも優しいおせちを作る際のポイントをお伝えします。

硬くて食べにくいおせちは、柔らかく食べやすい料理にアレンジする

おせち料理の一品一品はおめでたい意味を持ちます。数の子は子孫繁栄を願い、黒豆はまめまめしく末長く健康に過ごせる事を願う…といった事は知っているという人は多いのではないでしょうか。

一年の始まりに、おめでたい意味を持つおせちを食べる事で幸せをあやかりたいものですが、おせち料理の中には数の子の様な弾力があるものや、ごぼうやれんこんといった繊維が硬い野菜等高齢者にとって食べにくい料理もあります。

その様な場合は、例えば数の子は身がほぐれた状態の子持ち昆布で代用する、れんこんはすりおろして使用する、紅白なますの大根を素麺で代用する等、食材の選択や調理法を工夫したり、軟らかい食材で見た目を似せるといったアレンジの方法があります。

この様に、おせち料理の意味合いをなるべく残しつつ、その人に食べやすい料理にアレンジができるのが手作りおせちの良いところでもあります。

お節料理の意味合いを残す事で、長年おせちを手作りしてきたという高齢者にも幸せを願う気持ちが伝わります。

・おせち料理の高齢者向けアレンジ例

おせち料理 意味 アレンジ例
数の子 子孫繁栄を願う 子持ち昆布等で代用する
田づくり(片口鰯の飴炊き)  五穀豊穣を願う  鰯の南蛮漬け等で代用する
昆布巻き 「よろこぶ」に通じ、縁起が良い  とろろ昆布を使用した巻き寿司等で代用する
ごぼう(煮しめの具材等) 深く根を張り繁栄する事を願う  関西風のたたきごぼう、薄切りのきんぴらごぼう等で代用する
れんこん(酢れんこん、煮しめの具材等)  先の見通しが明るくなる事を願う  すりおろしてれんこんもちにする
紅白なます(大根、人参) 根菜の様に地に深く根を張り繁栄する事や、その見た目を水引きに例えて平和を願う 食材を茹でる、大根を素麺等で代用する

食器や盛り付けを工夫しておせち料理の雰囲気を演出する

おせち料理が持つ意味合いに捉われず、その人や他の家族みんなが好きな料理をおせちに取り入れるのも素敵です。

その場合は、定番の重箱に盛り付けるのははもちろん、手持ちのお皿に少しずつ料理を盛り付けて松の葉を添えるといった手軽な方法でもお正月らしさを演出する事ができます。

高齢者にとっては重箱から料理を取って食べるのが負担になる場合もあるので、予め少量ずつお皿に料理が盛り付けられている事でも食べやすくなります。

その他例えばサーモンとクリームチーズ等、一見洋風な食材でも色合いが紅白の食材を組み合わせて盛り付けたり、柚子をくり抜いて柚釜を作ってお好きな料理を詰めたり、華やかな箸袋を使用するのも良い方法です。

高齢者も楽しめる安心・安全な既製のおせちを選ぶ際のポイント

高齢者も楽しめる安心・安全な既製のおせちを選ぶ際のポイント

最近はおせちをインターネット等で購入するという家庭も増えています。

高齢者向けの軟らかいおせちを取り扱うメーカーもあり、既製のおせちを取り入れる事で介護者の負担軽減にも繋がります。

しかし、その人にとって食べやすく安心・安全なおせちを選ぶには購入時に確認しておきたいポイントもあります。

ここでは、既製のおせちを選ぶ際に押さえておきたい、高齢者も楽しめる安心・安全なおせちを選ぶためのポイントについてお伝えします。

噛む力や飲み込む力に合わせたものを選ぶ

軟らかく食べやすいと謳った高齢者向けのおせちは食品店メーカーや介護食品メーカー等から多くのものが販売されています。

しかし、既製のおせちを選ぶ際にはその人の噛む力や飲み込む力に合っているかの見極めも大切です。

例えば普段他の家族の食事から軟らかい煮物や魚等を取り分け、同じ形態で食べる事ができている人は既製の高齢者向けおせちも問題なく食べられる可能性が高いですが、おかずを細かく刻んだり、ムセやすく普段からとろみ剤を利用しているといった場合は更に詳しくおせちの内容を吟味する必要があります。

そこで参考にしたい一つの基準として日本介護食品協議会か制定した「ユニバーサル・デザイン・フード」です。

この基準は、「容易にかめる」、「歯ぐきでつぶせる」、「舌でつぶせる」、「噛まなくてよい」の4段階からなり、その基準に見合った市販の介護食品や通信販売で購入できる高齢者向け宅配弁当等に表示されています。

普段の食事においておかずを刻んだりとろみを付けるといった調理の工夫が必要な場合は「歯ぐきで潰せる」「舌でつぶせる」といった基準の客観的評価を得たおせちを選ぶのが安心です。これらの基準のおせちは、介護食品メーカーによって多く展開されています。

高齢者向け宅配弁当やレトルトの介護食を取り入れておせち料理風にする方法も

噛む力や飲み込む力が特に低下していて、普段は食事をミキサーにかけペースト状にして食べている等、固形の状態の食事を食べる事が難しい場合では、既製の高齢者向けおせちでも食べられるものが限られてくるという現状があります。

その様な場合はユニバーサル・デザイン・フードの「舌でつぶせる」、「噛まなくてよい」といった区分に相当するムース食タイプの高齢者向け宅配弁当やペースト状で市販されているレトルトタイプの介護食を取り入れ、食器や盛り付けの工夫をする事でおせち料理風に仕上げるといった方法もあります。

自宅でムース食やペースト食を見た目良く仕上げるには手間と技術を要する事が多いですが、見た目を重視したいおせち料理には、調理の工程を省く事ができる宅配弁当やレトルトの介護食はおすすめです。

活用例としては、お正月らしいムース食の豚の角煮や煮魚といったおかずに固形部分を除いた栗きんとんを添える、ペースト状で市販されている鮭やうぐいす豆の煮物をお粥とは別に盛り付けて紅白と鮮やかな緑の色彩を楽しむといった方法もあります。

餅の代用レシピや介護食品の活用で高齢者もお正月を楽しめる!

餅の代用レシピや介護食品の活用で高齢者もお正月を楽しめる!

お正月の高齢者の食事で悩みの種となりがちなのが、お餅を食べさせる事ができないといった事ではないでしょうか。

その人の食事をするために必要な機能の状況にもよりますが、ご存知の通り高齢者は餅を喉に詰まらせやすく、命に関わる事故に繋がる事も多くあります。

しかし、一年の始まりはできる事なら家族みんなでお雑煮等を楽しみたいものですよね。

その様な場合に知っておくと重宝するのが、白玉粉にじゃがいもや絹ごし豆腐を混ぜて作る歯切れの良い餅や、れんこんをすり下ろして作るれんこん餅といった餅の代用レシピです。

市販の切り餅と比べて口の中に張り付きにくく、喉に詰まらせる心配も少ないので、高齢者や子供にも安心なのはもちろん、家族みんなでおいしく食べられます。

また、介護食品メーカーからも歯切れが良く喉に詰まりにくい餅が冷凍の状態で販売されており、解凍するだけで食べられるので手間が少なく便利です。

冷凍のものであれば、お正月以外にもおやつとして活用できるため、元々餅が好きな人には特に喜ばれるでしょう。餅の代用レシピについては、この後にもレシピとしてご紹介します。

高齢者も楽しめるおせち料理の簡単レシピ

ここからは、軟かくて高齢者にも食べやすく、めでたさを感じる事ができるおせち料理のレシピをご紹介します。

自宅でも揃えやすい材料で作る、餅の代用レシピもご紹介していますので是非ご活用下さい。

鰯の南蛮漬け

鰯と野菜を調味液に漬ける事で軟かく仕上げます。

めでたさを表す頭付きの鰯を使っていますが、噛む力や飲み込む力に応じて頭と身を分けて調理しましょう。

<材料 (3人分)>
・鰯(小ぶりなもの) 15尾程度
・塩・胡椒 少々
・片栗粉 小匙2
・揚げ油 適量
・人参1/4本(千切り)
・玉ねぎ1/4個(薄くスライス)
・酢 100ml 砂糖 大匙1 鶏ガラスープの素 小匙2◆

<作り方>
1.鰯を洗い、水気をよく拭いて塩・胡椒、片栗粉をまぶす。
2.フライパンに油を熱し、180℃で5〜6分揚げる。
3.人参、玉ねぎを切ったものをジッパー袋に入れ、◆を入れてよく混ぜる。
4.③に②を入れ、1時間以上漬ける。

(1人分)約190kcal 塩分1.4g

黒豆のムース

口当たりが良く、噛む力や飲み込む力が低下した人にも安心な黒豆のムースです。

おせちのリメイクデザートとして、家族みんなで楽しめます。

黒豆のムース

<材料 (4人分)>
・黒豆 100g
・豆乳 100ml
・生クリーム 100ml
・ゼラチン 5g
・お湯 50ml

<作り方>
1.生クリームを7分立てに泡立てる。
2.ゼラチンをお湯で溶かす。
3.黒豆、豆乳をミキサーにかけ、粒がなくなったらゼラチンを2〜3回に分けて加えて更にミキサーにかける。
4.①に③を混ぜ、ふんわりと混ぜる。
5.器に分けて入れ、冷蔵庫で冷やし固める。

(1人分)約200kcal 塩分0.4g

そうめんなます

紅白の彩りか美しく、人参を茹で、大根をそうめんで代用する事で高齢者にも軟らかく食べやすい一品に仕上がります。

そうめんを酢で和えるのは意外な組み合わせですが、サラダの様な新感覚で楽しむ事ができます。

そうめんなます

<材料 (2人分)>
・そうめん(乾) 40g
・人参 30g(3cm程の千切り)
・砂糖 大匙2.5 酢 大匙2 塩 小匙1/2◆
・オリーブ油 小匙1

<作り方>
1.そうめん、人参をそれぞれ茹で、そうめんは5cm程の長さに切り、オリーブ油をからめておく。
2.①を合わせておいた◆と合わせる。

(1人分)約135kcal 塩分1.6g

れんこん餅

あんこや黒蜜にからめると甘味に、汁物に入れるとお雑煮風に、あんをかけて薬味を添えると副菜にもなる万能なレシピです。

れんこんの変色を防ぎ、できるだけ餅の白さを表現するために酢を加えています。

れんこん餅

<材料 (2人分)>
・れんこん 皮付きで300g
・片栗粉 大匙2
・塩 小匙1/4
・酢 小匙1
※陶器またはプラスチック製のおろし器(鉄製のものはれんこんが変色するため)

<作り方>
1.蓮根は皮をむいて水でこすり洗いしてからすり下ろし、片栗粉、塩、酢を加える。
2.①を4等分し、ラップで茶巾型に包む。
3.耐熱皿に②を並べ、500Wのレンジで4分程加熱する。
4.冷めたらラップからはずす。

(1人分)約110kcal 塩分0.9g

じゃがいもと白玉粉の代用餅

じゃがいもと白玉粉を同量の割合で混ぜ合わせる事で歯切れの良い高齢者向けの餅が仕上がります。焼き色を付ける事で焼き餅の美味しさを表現しています。

シンプルな味なので、甘いタレにもお雑煮にも合います。

じゃがいもと白玉粉の代用餅

<材料 (2人分)>
・じゃがいも 150g(大1個)
・白玉粉 150g
・ぬるま湯 適量
・サラダ油 小匙1/2

<作り方>
1.じゃがいもは皮をむいて輪切りにし、軟かくなるまで茹でて滑らかになるまで潰す。
2.白玉粉にぬるま湯を加えながら、耳たぶくらいの軟かさになるまでこねる。
3.①と②を混ぜながらよくこね、食べやすい大きさに丸める。
4.フライパンに薄く油を引き、弱火〜中火で両面に焼き色が付くまで焼く。

(1人分)約340kcal 塩分

高齢者のおせちは噛む力や飲み込む力に応じたものを選び、目でも楽しめる工夫を

おせちといえばお正月には欠かせない行事食ですが、おせち料理の種類によっては噛む力や飲み込む力が低下した高齢者にとっては食べにくいものもあります。

高齢者も楽しめるおせちを自宅で作るためには、おせち料理一品一品が持つおめでたい意味を大切にしながら、硬くて食べにくい食材を調理の工夫で軟かく調理したり、軟らかい食材で代用する等してアレンジするといった方法や、盛り付けや食器等を工夫して目でもおせちを楽しめる様にするといった方法があります。

また、最近ではおせちをインターネット等で購入する家庭も増え、軟かくて食べやすいと謳った高齢者向けのおせちも販売されています。

高齢者が食べるおせちを購入する場合は、その人の噛む力や飲み込む力に見合ったものを選ぶ事が重要です。

特に、普段の食事を刻んだ状態やとろみ剤を使いながら食べているという人は、介護食メーカー等が展開する「歯ぐきで潰せる」「舌で潰せる」といったユニバーサル・デザイン・フードの表記があるものが安心です。

普段の食事の形態がペースト状等で固形物を食べる事が難しい場合は、「舌で潰せる」「噛まなくてよい」といった表記があるムース食タイプの高齢者向け宅配弁当や、色彩が良いペースト状のレトルト介護食を取り入れて見た目に配慮した盛り付けをし、目でも楽しめる工夫をするといった方法もあります。

お正月の高齢者の食事に関する悩みとしては喉に詰まりやすい餅を食べさせる事ができないといった事も挙げられますが、その様な場合はれんこん餅や白玉粉で作る歯切れの良い餅等の代用レシピを覚えておくと重宝します。

餅の代用食品は介護食メーカーからも冷凍の状態で販売されており、お正月だけではなく普段のおやつにも取り入れられるので、餅が好きな人等には特に喜ばれるでしょう。

それと合わせて、見た目も美しくその人の噛む力や飲み込む力に見合ったおせちで食卓を囲む事で高齢者もお正月を楽しむ事ができます。

>oharu(おはる)

oharu(おはる)

自身のスポーツ経験から管理栄養士を志し、大学卒業後総合病院の管理栄養士として8年勤務する中で高齢者の栄養サポートやがん患者に対する緩和ケア等のチーム医療にも参加。現在は幅広い年齢層を対象に予防医療の分野で活動中。

【所有資格】・管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・病態栄養専門管理栄養士・がん病態栄養専門管理栄養士