噛む力、飲み込む力が低下した高齢者にもやさしい!家庭でできるムース食の作り方

介護食の形態として、ソフト食やミキサー食等様々な形態がありますが、ムース食という食事は耳にした事があるでしょうか?

ムースというと、フランス料理でも提供される食事としても知られていますが、高齢者にとってはどの様なメリットがある食事なのでしょうか?

また、高齢者の介護が自宅で行われる場合は、介護食は自宅で作る事が出来るかという点や、その作り方については食事を用意する人からの相談として多く見られます。

今回本記事では介護食の中のムース食という形態に焦点を当て、食事の特徴や作り方について簡単なレシピを交えながらお伝えします。

ムース食とはどんな食事?ソフト食やミキサー食との違いは?

介護食のムース食とは、どの様な食形態なのてしょうか。ムース食は、通常の料理や柔らかく火を通した食材をミキサーにかけて滑らかにし、更にプリン状の硬さに固めた形態の食事です。

硬さの目安としてはソフト食と同様に舌で潰せるという表現が当てはまりますが、食べ物の原型を残している食事もあるソフト食とは違い、食事や食材をミキサーにかけてから再度成形するので、見た目は固形ではあるものの、その舌触りは滑らかで粒感を感じない状態です。

同じくミキサーにかけて調理するミキサー食はムース食よりも水分が多く、飲み込む力や口の中で食べ物をまとめにくい人にはトロミをつけて提供します。

この事から、ムース食はソフト食とミキサー食の利点を両方活かした食形態とも言え、ミキサーをかける際に高カロリー・高たんぱくなつなぎを加える事が多いので、ミキサー食と比較して少量でも高栄養であるという特徴もあります。

この事から、ムース食は噛む力な飲み込む力が特に弱くなった人や歯がない人、食事量が少なく栄養面で不安がある人等に幅広く提供されています。

特徴 この様な場合におすすめ 不向きである場合
ムース食 ・ミキサーした食事を固める
・プリン状の硬さ
・舌で潰せる硬さ
・噛む力や飲み込む力が特に弱くなった
・口の中で食べ物がまとまらない
・歯がない
・食事量が少ない
・胃腸が弱い
特になし
ソフト食 ・柔らかく煮込む
・ミキサーした食事を固める
・舌で潰せる硬さ
・噛む力や飲み込む力が弱くなった
・口の中で食べ物がまとまらない
・胃腸が弱い
特になし
ミキサー食 ・食事をミキサーにかける
・むせやすい人はとろみをつける
・噛む力や飲み込む力が特に弱くなった
・歯がない
・胃腸が弱い
・口の中で食べ物がまとまらない(誤嚥しやすくなる)
・多くの量を食べられない人

ムース食のメリット

ムース食のメリット

ムース食のメリットはどの様な点が挙げられるのでしょうか。ムース食は固形の形態でありながら舌触りが滑らかなので、噛む力が弱い人だけではなく飲み込みが不安な人にとっても食べやすい食形態です。

その他、食事や食材をミキサーにかけて固める工程で、美味しそうな見た目に配慮したり、栄養価を上げる事もできます。ここからは、ムース食の特徴から得られるメリットについてお伝えします。

ムース食なら歯がない人や飲み込みが特に不安な人にも安心

ムース食は口の中に入った時は固形ですが、舌で潰すと粒感の無い滑らかな状態になるので、歯がない人でも歯を使わずにすり潰す事ができ、刻み食の様に食事が口の中に散らばったり、ミキサー食の様に急激に口の中や喉に流れ込みにくいので、歯がなく噛む事が特に不安な人や、ソフト食の様な舌で潰す事ができても原型が残っている食事では飲み込みが不安という人でも安心して食べる事ができます。

ムース食なら見た目も楽しめる

ムース食はプリン状のやや弾力がある形態なので、ミキサーにかけた後に自在な形で成形でき、食材ごとにミキサーをかけて固めれば、食材それぞれの色も綺麗に表現できます。

食材を固めた後、例えば人参であれば半月型に切ったり、花形で型抜きをしたりする事で煮物に添えられた人参そっくりに成形する事ができます。

魚や肉等はミキサーした後に魚の形に入れて固めたり、肉類は固まった後にテリーヌ風に切り分ける事でもとの食事や食材を連想しやすくなります。

また、フランス料理のコースに出てくる様に、おしゃれな器に上品に盛り付けるのも、普段の介護食と目先が変わり喜ばれます。

ムース食なら少量で高栄養

ムース食はミキサー食よりも水分が少ない分、滑らかな舌触りにするためにカロリーが高い生クリームやマヨネーズ、高栄養な液体の栄養補助食品を加えて調理する事も多くあります。

同じ栄養量のミキサー食と比べると、ムース食はカサを減らして仕上げる事ができます。

高齢者の多くは食が細く、汁気やトロミ等の水分でカサが増してしまった食事は完食できない事も多いですが、ムース食はミキサー食等に比べてカサが少ないので、完食しやすいのもメリットです。

ムース食は家庭でも作る事ができる?作り方のポイントとは!?

ムース食は家庭でも作る事ができる

つなぎを加えてミキサーにかけたり、固めたりと、ここまでお伝えしたムース食の特徴から、工程が多く作るのが難しそう、家庭でも作れるのだろうか?と不安に感じている人も多いでしょう。

ムース食は家庭でも作る事ができますが、安全で美味しく調理するためには押さえておきたいポイントやあると便利な道具等もあります。ここからは、ムース食を家庭で作る際のポイントについてお伝えします。

ムース食に適した食材を選ぶ

ムース食に限らず介護食は柔らかく仕上げるための食材選びが重要です。特にムース食はミキサーにかけた時に繊維が残りにくい食材が適しています。

繊維を取り除いて舌触りを良くするためにも皮や種は取り除いて使用します。

ナッツやドライフルーツ等硬い食材やこんにゃく、イカ、タコ等の弾力がある食品は噛み切りにくくミキサーにもかける事が難しいので、ムース食をはじめ介護食全般で不向きな食材です。

ムース食に適した食材 ムース食として調理が難しい食材
・お粥
・木綿豆腐、絹ごし豆腐
・肉、魚
・海老、帆立の貝柱等
・芋、かぼちゃ
・人参、かぶ等の根菜
・トマト(湯むきして種をとる)、茄子(皮をむく)、ブロッコリー、葉物野菜の葉先
・ナッツ、ドライフルーツ
・こんにゃく
・イカ、タコ等の弾力がある魚介類→ミキサーにかける事が難しいため

つなぎを加えてミキサーにかけた後、必要に応じて固める

ムース食は食事や食材をミキサーにかける際につなぎを加える事と、ミキサーをかけた後に加熱したりゼラチンや介護食用凝固剤等を加える事で滑らかな舌触りとのどごしが良い食感が生まれます。

つなぎには水分や油脂を加えてミキサーにかけやすくしたり、加熱した際に舌触りを良くする働きがあります。

つなぎになる食品 固めるために使用する食品
・はんぺん(そのものを擦り潰してもムース状になる)
・卵、長芋(加えて加熱する事で舌触りが良くなる)
・出し汁
・牛乳
・生クリーム
・マヨネーズ
・栄養補助食品
・ゼラチン
・介護食用凝固剤

あると便利な調理器具、介護食用食品

ムース食を家庭で作る際にはミキサーが必要ですが、鍋や容器に直接入れて攪拌できるバーミックスも便利です。

また、ミキサーした後の食品を固めるための容器は、シリコン製のケーキ型やチョコレート型等の製菓用の型が使いやすくおすすめです。

プリン状に固める際には身近な食品としてゼラチンを使用する事も多いてすが、ムース食に特化した介護食用の凝固剤は固めたい食品と一緒にミキサーにかけるだけでプリン状に固める事ができる製品もあり、手間が省ける他出来上がりの硬さを一定にしやすいというメリットもあります。

噛む力や飲み込む力が低下した高齢者にもやさしい!家庭でできるムース食のレシピ

ここからは、家庭でできるムース食のレシピをご紹介します。家庭でも手に入りやすい、身近なメニュー、食材を使ったレシピにしています。

ゼラチンは体温以上の温度になると溶ける性質がありますが、温かい状態で提供する場合は、主食であれば介護食用凝固剤、肉や魚であればつなぎを加えて蒸す、加熱後のものをミキサーにかけて介護食用凝固剤で固めるという方法であれば再加熱しても形が崩れません。

また、食材が少量の場合はミキサーにかけにくいので倍量で作るか、バーミックスを使用すると少量でも攪拌しやすいです。

ムース粥

お粥はもともと水分が多いので、温かい状態であればそのままでもミキサーにかけやすい食品です。温かい状態で提供する場合は、再加熱して形が崩れない介護食用凝固剤で固めるのがおすすめです。

介護食用凝固剤は種類によって食品の重量に対する使用量が違うので、確認して使用しましょう。

ムース粥

<材料(1食分)>
・全粥 150g
・ゼラチン1.5gまたは重量に応じた介護食用凝固剤

<作り方>
1.温かい粥をミキサーにかけ、鍋に移してゼラチンを煮溶かして茶碗に入れ冷やし固める。

(1人分)約110kcal 塩分 0g

ムース肉じゃが

ムース肉じゃが

<材料(2食分)>
・豚肉 60g コンソメスープ 50ml ゼラチン1.1g
※ゼラチンは重量に応じた介護食用凝固剤で代用可
・じゃがいも 60g コンソメスープ 50ml ゼラチン1.1g
・玉ねぎ 40g コンソメスープ 30ml ゼラチン0.7g
・人参 40g コンソメスープ 30ml ゼラチン0.7g
・水、酒、みりん、醤油各大さじ1 ◆
・片栗粉 小さじ1 水 大さじ1(片栗粉を水で溶く)
・お好みで飾りの青味等

<作り方>
1.材料は全て茹でるか蒸して火を通しておく。
2.コンソメスープの総量の水(このレシピであれば160ml)を軽量し、パッケージの分量通りにコンソメの素を溶かす。
3.ゼラチンは食材ごとの使用量を軽量する。(1gに満たない分量は倍量を測って等分すると測りやすい。)
4.食材ごとに分量のコンソメスープと合わせ、ミキサーかバーミックスをかける。
5.④を鍋に移してゼラチンを加え煮溶かし、型に入れて冷やし固める。
6.◆をフライパンに煮立たせ、水溶き片栗粉でとろみをつけて冷ます。
7.⑤が固まったら好みの形に切り分けて盛り付け、⑥を上からかける。

(1人分)約170kcal 塩分2.1g

白身魚のムース ムニエル風

メインになる肉や魚等は、温め直しても型が崩れない、加熱をしてムース状にするという方法もあります。

魚は白身魚の他、鮭や青魚でも応用できます。また、牛乳は液体タイプの栄養補助食品を使用すると更に栄養価がアップできます。

その場合は、ミルク味、ヨーグルト味、コーンポタージュ味等風味が強くない種類がおすすめです。

白身魚のムース ムニエル風 オリジナル

<材料(2食分)>
・白身魚 2切
・塩、胡椒 少々
・卵 1個
・牛乳 50ml
・溶かしバター 5g

<作り方>
1.魚の皮と骨を取り除き、塩、胡椒、卵、牛乳といっしょにミキサーにかける。
2.①を耐熱の型または容器に入れ、ホイルをかける。
3.鍋に容器が半分浸かる程のお湯を沸かし、蓋をして弱火で15分程蒸す。
4.溶かしバターを上からかける。

(1人分)約160kcal 塩分0.8g

鶏肉のムース 生姜焼き風

こちらは一般的に家庭で手に入りやすい食材を使ったムース食です。ゼラチンや介護食用凝固剤を使って固める場合は、あらかじめ食材を加熱処理してからミキサーにかけましょう。

鶏肉のムース 照り焼き風 オリジナル

<材料(2食分)>
・鳥もも肉(皮なし) 100g
・コンソメスープ 80ml
・マヨネーズ 大さじ1
・ゼラチン 1.8gまたは重量に応じた介護食用凝固剤
・酒、みりん、醤油 各大さじ1 生姜汁 適量 ◆
・片栗粉 小さじ1 水 大さじ1(片栗粉を水で溶く)

<作り方>
1.鳥もも肉はゆでてミキサーにかけやすい大きさに切る。
2.①とコンソメスープ、マヨネーズをミキサーにかける。
3.②を鍋に移し、ゼラチンを加えて煮溶かし、型に入れて冷やす。
4.小鍋に◆を煮立たせ、水溶き片栗粉でとろみをつけ、冷ます。
5.③が固まったら好みの大きさや型に切り分け、④をかける。

(1人分)約150kcal 塩分2.4g

彩り野菜のムース

彩りの良い野菜のムースはサラダ風や添え野菜としても重宝します。トマトやブロッコリー等でも綺麗に仕上がります。

野菜ムース photo-ac

<材料(2食分)>
・人参 70g (柔らかく茹でるか蒸す)
・出し汁 60ml マヨネーズ 小さじ1/2 ゼラチン1.3g
・ほうれん草の葉先 60g (茹でてミキサーにかけやすい長さに切る)
・出し汁 40ml マヨネーズ 小さじ1/2 ゼラチン1g

<作り方>
1.人参、ほうれん草にそれぞれ分量の出し汁、マヨネーズを加えてミキサーにかける。
2.①を別々の小鍋に移してゼラチンを煮溶かし、容器に流して冷やし固める。
3.固まったら好みの型に切り分けるか、型で抜く。

(1人分)40kcal 塩分0.1g

ムース食の宅配弁当や既製品も便利

ムース食の宅配弁当や既製品も便利

ここまでは家庭でムース食を作る際のポイントをお伝えしてきましたが、最近人気の高齢者向けの宅配弁当でもムース食の形態を取り扱っているものもあります。

解凍してすぐ食べられる宅配弁当や、介護食品のメーカーが販売している既製品のムース食を冷凍庫にいくつか用意しておくと食事の用意が難しい時等に安心です。

宅配弁当や既製品はより衛生的で食材のバリエーションも多く、カロリー等のめやすも分かりやすいといったメリットもあります。

ムース食を家庭で作る時は食材選びや手順のポイントを押さえよう!

介護食におけるムース食は、見た目は固形でありながら粒感がない滑らかな舌触りと舌で潰せるプリンの様な食感が特徴の食事です。

ムース食は滑らかな舌触りと舌で潰せるといった特徴から、噛む力や飲み込む力が特に弱くなった人や歯がない人にも食べやすく、ミキサー食等に比べて高栄養に調理がしやすいので食事量が少ない人でも必要栄養量を摂取しやすいといったメリットがあります。

ムース食は食事や食材をミキサーにかけた後にゼラチンや介護食用凝固剤でプリン状に固めて作りますが、家庭で安全においしくムース食を作るためには食材選びや作り方のポイントを押さえ、必要に応じて便利な調理器具や介護食用の凝固剤を適宜使用する事が大切です。

また、最近人気の高齢者向け宅配弁当でもムース食の形態を取り扱っているものもある他、介護食品メーカーでも既製品のムース食を販売しており、解凍するだけで簡単に提供でき、より衛生的なので食事を用意するのが難しい時等に重宝します。

>oharu(おはる)

oharu(おはる)

自身のスポーツ経験から管理栄養士を志し、大学卒業後総合病院の管理栄養士として8年勤務する中で高齢者の栄養サポートやがん患者に対する緩和ケア等のチーム医療にも参加。現在は幅広い年齢層を対象に予防医療の分野で活動中。

【所有資格】・管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・病態栄養専門管理栄養士・がん病態栄養専門管理栄養士