高齢者の食事、施設の献立表を参考に自宅で実践するためのポイントをご紹介!

病院や施設では、毎日の食事に献立表があり、それに沿って食事が提供されています。

そして自宅に戻った際の食事を病院や施設での献立表を参考に用意をしたいという方も多く、その時は私たち栄養士はとても嬉しいものです。

しかし一方で、自宅に戻ってからの食事に不安を感じたり、実際に食事作りに挫折してしまう人もいます。

病院や施設と家庭では設備やマンパワーはもちろん、調理の勝手等が異なるため、病院や施設等の献立を家庭で実践しようとすると、「栄養のバランスが良い食事作りは思った以上に大変」「カロリー等の栄養価が知りたいけど、自分では計算できない」「用意できる食材に限りがある」といった背景から自宅での食事における献立に関して不安に繋がる事が多くあります。

今回本記事では、その様な不安の背景や、自宅における献立作成のポイントについてお伝えします。

「自宅での食事をどうしたら」高齢者の食事、献立に関する不安に繋がる3つの背景

「自宅での食事をどうしたら」高齢者の食事、献立に関する不安に繋がる3つの背景

病院や施設と家庭では、設備やマンパワーは当然異なり、病院や施設の献立を自宅における食事の参考にしようとしても、実践が難しい場合もあります。

ここでは、自宅における食事について不安に陥りやすい3つの背景についてお伝えします。

栄養のバランスが良い食事の献立を考えるのが難しく感じる

病院や施設での献立を見ると、「一汁三菜」が揃っているイメージではないでしょうか。

その様な食事は視覚的にも「バランスが良さそう」と感じられるでしょう。

しかし、自宅で食事を用意するとなると、食事の用意にかけられる時間や揃えられる食材の種類が限られるといった理由で病院や施設の様な品数の食事の献立を考えるのは容易ではありません。

一度「難しい」と感じてしまうと対処法が見つかるまで献立の立て方に迷ってしまい、悩みに繋がります。

病院や施設の様に栄養価計算ができない

病院や施設で提供される食事は栄養価計算されており、カロリーや塩分等が献立表に記載されています。

栄養価が目で見て確認できる事は、持病がある人や栄養不足が気になる人にとっては安心感があるものです。

しかし、自宅で食事の栄養価計算をしようとすると、食材や調味料の使用量当たりのカロリーや塩分を把握する必要があり、カロリー計算のアプリ等を使用するとしてもその都度計算をするのは大変な事です。

自宅介護での食事は、高齢者の満足度や栄養面ももちろん大切ですが、食事は毎日用意する必要がある事が多いため、介護者の負担軽減も重要事項といえます。

そのためには、大まかな見積もりで栄養了解を把握し栄養不足を防ぐ事や、高齢者向け宅配弁当等の便利なサービス利用するのも一つの方法です。

自宅では多くの食材が用意できない

病院や施設での調理は、基本的に大量調理です。

そのため、1食に多種類の食材を取り入れる事が可能です。

しかし、自宅においては食材の下処理に要する時間、鮮度の保持、保管場所等といった事情で多くの食材が用意する事が難しいものです。

また、高齢者は噛む力や飲み込む力の低下により、食べられる食材が限られる場合も多く、限られた食材では献立が単調になりやすいという悩みも多く聞かれます。

不安を解消!自宅における献立作成のポイント

不安を解消!自宅における献立作成のポイント

ここまでは自宅で高齢者を介護する際に悩みとして聞かれやすい、食事の献立に関する不安についてお伝えしてきました。

病院や施設と自宅では設備やマンパワー等は異なりますが、献立作成のポイントやコツを押さえる事で介護者の負担を増やさず、高齢者にとって安心、安全で健康を維持する事ができる食事を提供する事ができます。

ここからは、自宅介護での献立作成のポイントについてお伝えします。

一汁三菜にこだわらず、主食、タンパク源、野菜(または汁物)を取り入れる

バランスの良い食事と聞くと、品数の多い食事をイメージする方が多いのではないでしょうか。

しかし実は、多くの品数を揃えなくても栄養のバランスを整える事が可能です。バランスの良い食事に必要なのは、エネルギー源となるご飯やパン、麺等の主食と、筋肉や血液等のもととなる肉や魚、卵、大豆製品等のタンパク源、ビタミンやミネラルの供給源となる野菜です。

これらの食材は一品ずつ取り入れても良いですが、例えば主食のご飯とタンパク源の卵や肉が一緒に摂れる親子丼と野菜料理である小鉢のお浸し等を組み合わせるといった方法で、少ない品数でもバランスの良い献立を叶える事ができます。

また、汁物に豆腐や野菜を入れて具沢山にすると、不足しがちなタンパク質やビタミン、ミネラルを簡単に補える便利な一品になります。

・自宅介護における1日の献立例

メニュー ポイント
朝食

・ロールパン 2個
・ツナ入りソテー
・皮むきトマト
・ソテーにツナを加える事でタンパク源になります。
昼食

・親子丼(卵、鶏肉、玉ねぎ)
・ほうれん草のお浸し
・お茶
・ボリュームのある親子丼には、箸休めの小鉢が相性が良く、野菜を補えます。
間食

・フルーツヨーグルト ・食が細い人は間食で栄養を補いましょう。
・乳製品には吸収率の良いカルシウムが豊富なので、1日に1回は取り入れたいですね。
夕食

・ご飯(150g)
・鮭と野菜のホイル焼き
・きゅうりとわかめの酢の物
・なめこと豆腐の味噌汁
・基本的な品数の食事です。
・汁物の具材で、豆腐等のタンパク源や野菜類等、不足しやすい食材を補う事ができます。

食材の目安量を知って、栄養の過不足を回避!アプリや宅配弁当も便利

自宅では病院や施設の食事の様に詳細な栄養価計算をする事は難しい場合が多いですが、高齢者に必要な1食分の主食、タンパク源、野菜等のそれぞれの目安量を知る事で栄養のバランスが良い事はもちろん、概ねの必要栄養量に対して過不足のない食事の献立を立てる事が可能です。

具体的には、以下の表の様に表す事ができます。また、農林水産省が発行している「食事バランスガイド 高齢者向け解説書」でも料理単位での目安量が分かりやすく解説されています。

最近では食材と重量を入力すると栄養価計算と献立作成が合わせてできるアプリもあり、自宅で詳細な栄養価計算をしたい人には便利です。

その他、各社がつんその他、各社が展開している高齢者向け宅配弁当サービスでは、全てのおかずが栄養価計算されており、持病がある人に向けたカロリーや塩分がコントロールされたラインナップも揃っています。

必要に応じてサービスを利用する事で栄養価計算や難しい調理の工夫等が不要となり、介護者の大幅な負担軽減にも繋がります。

・高齢者の食事1食分の食品別目安量(1500kcal タンパク質約60gを想定)

食品の分類 主な食品 1食分の大まかな目安量
主食 ごはん、パン、麺 ・ご飯茶碗1膳(約150g)
・食パン 8枚切り2枚
・ゆでうどん 1袋
タンパク源 肉、魚、卵、豆腐 ・肉、魚 拳1つ分
・卵 1個
・豆腐 1/4丁(80〜100g )
・納豆 (40g)
野菜等(きのこ、こんにゃく、海藻を含む) 野菜、きのこ、こんにゃく、海藻 ・野菜100g以上が理想
・きのこ、こんにゃく、海藻はその人の噛む力、飲み込む力に合わせて使用

(参考:農林水産省:食事バランスガイド 高齢者向け解説書

まずは高齢者が食べやすい「基本の食材」をベースに、冷凍野菜等を活用

自宅では食材の下処理に要する時間、保管場所、鮮度の保持といった事情で多くの食材を揃える事が難し場合がほとんどです。

その上、高齢者の場合は噛む力や飲み込む力が弱くなる人も多く、それによって使用できる食材が限られる事も多くあります。

自宅における食事で無理なく食材のバリエーションを増やしていくには、軟らかく高齢者も食べやすい食材をベースに、冷凍野菜等を活用するという方法があります。

冷凍野菜は皮を剥いてある状態のものや、カット済のもの等下処理いらずで便利なものが多いのもメリットの一つです。

使用する食材のバリエーションが増える事で彩りだけではなく、ビタミン、ミネラル等のバランスも良くなります。

・高齢者も食べやすい、軟らかいおかずに向く食材の一例

軟らかいおかずに向いた食品
・卵
・木綿豆腐、絹ごし豆腐
・脂がのった肉、魚
・挽肉
・芋、かぼちゃ
・人参、大根等の根菜
・ほうれん草、白菜等の葉物野菜の葉先
・トマト(湯むきして種をとる)、茄子(皮をむく)、ブロッコリー

自宅における高齢者の食事の不安、献立作成のポイントを知って解消!

高齢者の食事において、病院や施設では献立表があり、栄養のバランスも良く栄養価計算もされているため、自宅でも参考にしたいという人は少なくありません。

しかし、病院や施設と自宅では、設備やマンパワー、使用できる食材等が異なるため、献立を立て食事を用意する事に対して不安を抱く事も多くあります。

その具体的な背景には、バランスの良い食事の献立を立てる事が難しく感じる、自宅では病院や施設の様に栄養価計算ができない、食材の保管や高齢者自身の咀嚼・嚥下能力によって使用できる食材に限りがある、といった理由があります。

しかし、自宅における献立作成のポイントやコツを押さえる事で介護者の負担を増やさず、高齢者にとって安心、安全で健康を維持する事ができる食事を提供する事ができます。

その方法として、品数には拘らず、栄養のバランス上必要な主食、タンパク源、野菜等を揃える事や、詳細な栄養価計算をしなくとも、高齢者に必要な1食分の食品の目安量を把握して栄養の過不足を防ぐ事、栄養価計算や献立作成アプリや高齢者向け宅配弁当等の便利なサービスを取り入れる事、高齢者も食べやすい軟らかい食材をベースに、冷凍野菜等を利用しながら無理のない範囲で使用する食材のバリエーションを増やすといった方法が挙げられます。

自宅介護における食事は高齢者の栄養面や満足度ももちろん重要ですが、介護者の負担軽減も同様に重要な要素です。

全て病院や施設と同じく実践しようとせずに、自宅で無理のない方法を取る事が大切です。

>oharu(おはる)

oharu(おはる)

自身のスポーツ経験から管理栄養士を志し、大学卒業後総合病院の管理栄養士として8年勤務する中で高齢者の栄養サポートやがん患者に対する緩和ケア等のチーム医療にも参加。現在は幅広い年齢層を対象に予防医療の分野で活動中。

【所有資格】・管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・病態栄養専門管理栄養士・がん病態栄養専門管理栄養士