高齢者の食事における好き嫌い。食べられるものを増やすには?その方法をご紹介!

好き嫌いが多い人に食事を作る時は、使う食材や作る料理の選択肢が狭まり、献立が決められない、ワンパターンになってしまうといった事で悩みがちです。

高齢者の食事においても同様で、中には好き嫌いが多く用意した食事を食べてもらえないといった内容の介護相談も目にします。

好き嫌いが多い事で食事量にムラができてしまうと、摂取栄養量の減少にもつながるため、できるだけ好き嫌いが多い高齢者にも食べやすい食事作りを心がけたいものです。

高齢者の好き嫌いには高齢者ならではの理由があり、その理由に寄り添い対処をする事で、苦手な食べ物を食べやすくする事も可能です。

本記事では実例を交えながら高齢者における好き嫌いの理由とその理由に寄り添った対処法をお伝えします。

高齢者の好き嫌い、4つの理由

高齢者の好き嫌い、4つの理由

高齢者の好き嫌いには、これまでの経験や加齢によって食事するために必要な機能が低下する事で特定の食品が食べにくくなるといった事が影響している事も多くあります。

ここでは、高齢者の好き嫌いに繋がる4つの理由についてお伝えします。

高齢者は食べた事がない食品に苦手意識を抱きやすい

その人によって個人差はありますが、高齢者は今までに見たことが無い外見の食品や料理、若い頃から食べ慣れていない味付けのメニューに対して苦手意識を抱きやすい傾向があります。

私の経験上では、紫キャベツや赤玉ねぎ等の少し変わった色の品種の野菜や、トマト煮等の酸味が強い煮物、グラタンやクリーム煮等のバターや牛乳といった乳製品の香りが際立つ料理を苦手とする人に多く出会いました。

高齢者の身体的特徴として、酸味によってムセやすい、消化機能の低下によって脂肪の多い料理は胃もたれ等の不快な症状を引き起こしやすいといった事があり、その様な症状も特定の料理に対する嫌悪感に繋がる事があります。

その食品について良くない思い出があり、食欲が沸かない

高齢者の食事の好き嫌いには、その食品にまつわる記憶が大きな影響を及ぼす事もあり、特定の食品に対して良くない思い出やイメージがある事で、食欲が沸かないというケースもあります

例えば、高齢者の中には子供の頃に食用として鶏等を飼育していて、さばいている場面を目の当たりにしてきたという人もおり、未だに鶏肉は苦手という人もいます。

また、一度青魚で食当たりをし大変な思いをしたために、それ以来青魚は苦手である等その人によってその食品が苦手な理由は様々です。

この場合はその食品を無理に勧める事は高齢者の心情や体調を害してしまう事もあるため、思いに寄り添い、代替えの食品で対応する等の対策が必要です。

その食品の味や食感、匂いが苦手

好き嫌いの理由として、その食品の味や匂いが苦手であるという事は高齢者に限った事ではなく、食べ物の好き嫌いがある人にとっては最も多い理由と言えるでしょう。

この様な理由から起こる好き嫌いは、子供の頃は苦手でも年月の経過によって克服できる場合もありますが、高齢になるまで根強く残る事も多くあります。

苦手の度合いにもよりますが、その食品の苦手な部分は味なのか、食感なのか、匂いなのかを教えてもらい、細かく刻んで他の食品に混ぜ込む等できるだけその特徴を主張させない調理法にする事で食べられる可能性もあります。

噛み切れない、飲み込みにくい食品や食べ飽きた料理は苦手

介護施設等で高齢者に対して嗜好調査を行うと苦手な食べ物として多くの声が挙がる食品として「葉物野菜、海藻」「野菜料理」「鶏肉」「魚」等があり、料理では「あんかけ料理」が苦手という結果をよく目にします。

その食品や料理が苦手な理由としては、「噛み切りにくい」「歯にはさまる」「パサつく」といった理由が多く、これは加齢により噛む力や飲み込む力が低下する事で食べにくくなる食品に対しての嫌悪感と言えるでしょう。また、あんかけ料理に対しては「献立に出てくる回数が多い」といった声も多く、食べ飽きたり、目にする回数が多くなる事によって嫌悪感に繋がる場合もあります。

あんかけはパサつきがちな食品の口当たりを良くする調理法として代表的な方法ですが、高齢者に楽しんで食事をしてもらうためには調理法の偏りにも配慮が必要です。

高齢者が食べられるものを増やすための4つの対処法

高齢者が食べられるものを増やすための4つの対処法

様々な食品をバランス良く食べ、摂取栄養量の不足を防ぐためにも苦手な食品や料理であっても食べられる物を増やしていけると良いですよね。

使う食材や味付け、口当たり等高齢者の食事における好き嫌いの理由に寄り添った対処をする事で、苦手な食品や料理を食べやすくする事ができます。

また、その理由によっては無理にその食品を食べさせようとせず、他の食品に置き換えるといった配慮が必要な場合もあります。

ここからは、高齢者が苦手な食品であっても食べられるものを増やすための対処法についてお伝えします。

食事のメニューや食材は、高齢者が食べ慣れたシンプルなものを選ぶ

既にお伝えしている様に、個人差はあるものの高齢者は食べ慣れないメニューや食材を苦手とする傾向があります。

その様な場合は、高齢者にとって食べ慣れた味付けや食材を選ぶ事で食べた時の味や食感が予測でき、安心感を与える事ができます。

酒、みりん、砂糖、味噌、醤油といった和食に使う基本的な調味料は高齢者が子供の頃から長年親しまれているものなので、食べ慣れた味に仕上がります。

また、これまでの経験上では様々な野菜を彩り良く合わせた和え物よりもほうれん草のお浸しが好まれる様に、一つのメニューに使用する食材の数が少ない、シンプルな材料のメニューが高齢者には好まれる傾向があると感じています。

高齢者の希望があれば可能な範囲で優先し、献立やメニューに迷った際には和の調味料を使用し、食材を多く使い過ぎずにシンプルな一品を心がけてみてはいかがでしょうか。

高齢者の思いを傾聴し、嗜好も尊重する

特定の食品やメニューにおいて、その食品やメニューにまつわる良くない思い出やイメージが好き嫌いに影響している場合は、無理に勧める事はせず、苦手な理由等を高齢者が話してくれる様であればその思いを傾聴しましょう。

高齢者の思いを傾聴した上で、例えば「青魚は前にしめ鯖で食あたりして以来嫌い」というエピソードがあれば「青魚全てが苦手なのか、それとも食あたりした鯖だけが苦手なのか」「きちんと火を通した煮魚等にしたら食べられそうか」といった様な問いかけをする事で好き嫌いの詳細や嗜好等について聞き出す事もできます。

そうする事で、「鯖は苦手だけれど鯵や鰯は食べられる」「鯖も味噌煮であれば食べられるかもしれない」といった様に、その食品やメニューにまつわるエピソードによっては味付けや調理法を変えればその食品を食べられる場合もあります。

高齢者の思いを傾聴した結果、どうしても苦手という場合には後にお伝えする栄養素が似た食品に置き換えるといった方法もあります。

栄養素が似た食品に置き換える、目立たない形状にして他の食品と合わせる

その食品の味や食感、匂い等が理由で例えば魚全般が苦手であるという場合や、野菜全般が苦手であるといった場合には、特定の食品への対処で対処しきれないだけではなく、タンパク質やビタミン・ミネラル・食物繊維等、その食品を除いてしまう事で摂る事ができない栄養素も出てきてしまうという問題もあります。

この様な場合には、例えば魚が苦手な場合であれば同じくタンパク質を多く含む肉や卵、大豆製品に置き換えるという方法や、野菜全般が苦手である場合には細かく刻む、潰す、すり下ろす等見た目や食感が目立たない形状にした上で他の食材と合わせ、風味を緩和するという方法もあります。

おすすめの調理法としては、野菜と牛乳や豆乳を合わせてミキサーにかけ、冷たい状態で提供する事で更に野菜の匂いが抑えられる冷製スープや、軟らかく煮た野菜とじゃがいもやかぼちゃを潰し、衣を付けて揚げ焼きにするコロッケ等があり、野菜の原形が目立たないだけではなく、衣の香ばしさやソースの味で比較的風味も気にせずに食べる事ができます。

食べにくい食品は調理法の工夫で軟らかく、喉越しが良い形態に仕上げる

高齢になると食べ物を噛む力や飲み込む力が弱くなり、噛み切る事が難しい食品やパサつく事で飲み込みにくい食品等はそのまま苦手な食品になりがちです。

この場合は、食感さえ良くなれば食べられる事も多いため、軟らかく喉ごしが良い形態に仕上げるための調理法の工夫をしてみましょう。

例えば噛み切りにくく敬遠されがちな野菜は、皮や種を取り除くだけでも食べやすくなりますし、隠し包丁を入れたり繊維を断ち切る様に薄切りにするという方法でも噛み切りやすくなります。

ペラペラと薄い葉物野菜や海藻等が口の中に張り付きやすく食べにくい場合は、卵やゼリーで寄せたり、納豆、オクラ、長芋等の粘りがある食品と合わせて刻むと口の中でまとまり、食べやすくなります。

肉や魚等の口あたりを良くする方法としてあんかけを用いる事も多くありますが、既にお伝えしている様に調理法の偏りも嫌悪感に繋がる場合があるので注意が必要です。

あんかけ以外で口あたりを良くする調理法としては、とんかつソース状のとろみがあるソースをかける、卵や牛乳、油脂類、芋類等を合わせて滑らかになるまでミキサーにかけてから加熱するといった工夫をする事ができます。

・食品を食べやすく調理する工夫

食品 調理法
米、パン、麺類 ・米は水分を多くして炊く
・パンは卵液やスープ等に浸す(フレンチトースト等)
・麺類は短く切って煮込む、あんをかけたり汁にとろみを付ける
肉、魚 ・パイン、キウイ、麹等肉を柔らかくする働きがある食品を使った漬けダレに漬け込む
・挽肉を使用したりミキサーにかける場合は油脂や卵、牛乳芋類等のつなぎを加えて加熱する
・塩は調理する直前にする
・上からあんやソースをかけてパサつきを抑える
野菜 ・繊維に対して垂直に、断ち切る様に切る
・皮や種は取り除く
・隠し包丁を入れる
・柔らかく煮る、蒸す
・口の中に張り付きやすい葉物や海藻は、卵やゼリー等で寄せる、粘りがあるものと一緒に刻む
・必要に応じてピューレ状にし、固める

苦手なメニュー・食品を食べやすくする献立のアレンジ例

ここからは、高齢者が苦手としやすいメニューを食べやすくするアレンジレシピをご紹介します。

味付けや使用する食材を高齢者にも馴染みのあるものを使用し、軟らかさや喉ごしにも配慮しています。もちろん好き嫌いがない人にも美味しく食べられます。

味噌仕立ての和風グラタン

ホワイトソースを使わずに作るグラタンです。味噌で味付けするので、コクがありながらも高齢者に馴染み深い味に仕上がります。

味噌仕立てのグラタン

<材料 (1人分)>
・ペンネ(乾)30g(茹でる)
・長芋 70g(皮をむいてすり下ろす) 卵 1個(溶きほぐす)◆合わせる
・豆乳 100ml
・味噌 小匙1
・葱 4〜5cm(斜め細切り)
・小麦粉 小匙1
・ツナ缶 1/3缶
・パン粉 小匙1
・サラダ油 小匙2

<作り方>
1.フライパンに油を熱し、葱とツナ缶をさっと炒め、小麦粉を絡ませる。
2.①に豆乳、味噌を加えとろみが付くまで火にかけながら混ぜる。
3.②にペンネを混ぜ、耐熱容器に移し、上に◆とパン粉を乗せ、トースターでこんがりと色づくまで焼く。

(1人分)約560kcal 塩分1.4g

なめらか野菜コロッケ

野菜が苦手な人におすすめな、野菜の粒が目立たないタイプのコロッケです。

パン粉は細かいタイプを使うと、より食べやすくなります。

なめらか野菜コロッケ

<材料 (約3人分)>
・じゃがいも 中3個
・人参1/2本
・玉ねぎ1/2個(薄切り)
・合い挽き肉 100g
・塩・胡椒 少々
・油 大匙1
・マヨネーズ 小匙1/2
・小麦粉、パン粉、溶き卵 適量
・揚げ油 適量

<作り方>
1.じゃがいもと人参は適当な大きさに切り、爪楊枝がすっと入るまでゆでる。
2.フライパンに油を熱し、玉ねぎ、合い挽き肉を炒め、塩・胡椒で味を整える。
3.①、②、マヨネーズを合わせてフードプロセッサーにかける。
4.③を円形に成形し、小麦粉、溶き卵、パン粉を付けて揚げる。

(1人分 2個)約310kcal 塩分0.5g

ほうれん草となめこの和え物

口の中に張り付きやすい葉物野菜も、なめこの粘りでまとまりやすくなります。

口あたりが良いので、もちろん家族みんなでおいしく食べられます。

ほうれん草となめこの和え物

<材料 (約3人分)>
・ほうれん草 1/2束
・なめこ 1/2袋
・めんつゆ 大匙1
・生姜チューブ 5mm

<作り方>
1ほうれん草、なめこはそれぞれ茹で、細かめに刻む。
2.ボウルに①、めんつゆ、生姜チューブを入れ、まとまりが出るまで混ぜる。

(1人分)約15kcal 塩分0.2g

白身魚の梅肉ソース

口あたりを良くする工夫としてあんかけはよく用いられますが、とろみのあるソースをかける事でも口あたり良く仕上がります。

このレシピは魚に片栗粉をまぶしてゆでる事でも口あたりを良くしています。

白身魚の梅肉ソース

<材料 (1人分)>
・白身魚 1切れ(皮をとる)
・片栗粉 小匙2
・塩 少々

◆梅肉ソース
・梅干し 大1個(みじん切り)
・しその葉 1枚(みじん切り)
・めんつゆ 大匙1
・みりん 大匙1

<作り方>
1.白身魚に塩と片栗粉をまぶし、熱湯で茹でて氷水にとる。
2.梅肉ソースの材料をボウルでとろみが付くまでかきまぜる。
3.①に②をかける。

(1人分)約210kcal 塩分3.1g

好きなおかずを繰り返し注文できる、高齢者向け宅配弁当もおすすめ

好きなおかずを繰り返し注文できる、高齢者向け宅配弁当もおすすめ

ここまでは高齢者の食事における好き嫌いの理由や対処法についてお伝えしてきましたが、好き嫌いの対処をしながら他の家族の食事の準備が必要な時等は、献立を決める事や食事作りが負担に感じてしまう人も多いでしょう。

実際に高齢者の食事作りは他の家族の分よりも軟らかく仕上げる必要がある等、好き嫌いの他にも配慮を必要とする場合もあります。その様な場合に便利なのが、高齢者向けの宅配弁当サービスです。

現在この様な宅配弁当サービスは各社が展開しており、軟らかく簡単に噛める形態から舌で潰せるムース食まで形態やメニューも様々です。

お弁当は冷凍で届き、気に入ったメニューを繰り返し注文する事もできるので、お気に入りのお弁当を冷凍庫にストックしておけば介護者が忙しい時や不在の時に活躍します。

各社サンプルのお取り寄せもできるので、試食をしながらお気に入りを見つけて見てはいかがでしょうか。

好き嫌いには理由がある!理由に応じた工夫と、嗜好の尊重も必要

高齢者の食事における好き嫌いは、献立や食材選びに迷ったり、メニューが単調化しやすいというだけではなく、食事量にムラが生じる事で摂取栄養量が減少し、栄養不足に陥るといった問題も孕んでいるため対処が必要です。

高齢者の好き嫌いには食べ慣れないものに苦手意識を抱いたり、特定の食品に対して良くない思い出やイメージがある事や、硬さや喉越しの悪さといった高齢者にとって食べにくい形状である等、高齢者ならではの理由がある場合もあり、好き嫌いの対処をする際はその理由に寄り添った方法で対処をする事が大切です。

高齢者の好き嫌いへの対処法として、高齢者に安心感を与える食事にするために醤油や味噌等の和の調味料を使用した馴染みのある味付けにする事や、その食品が苦手な理由について高齢者の思いを傾聴し、その中でも食べられる味付けやその他の嗜好があれば尊重する事、その食品の味や匂い、食感を目立たせない調理の工夫や、硬い食品や喉越しが悪く高齢者にとって食べにくい食材は、例えば野菜であれば皮や種を取り除く、隠し包丁を入れる等の工夫をするといった方法を取る事で食べられる食品を増やしていく事も可能です。

しかし、高齢者の食事は食形態等といった好き嫌いの他にも配慮が必要な点は多く、たとえば他の家族の食事も合わせて用意する事が必要な場合等は介護者の負担が大きくなりがちです。

その様な場合には各社が展開する高齢者向け宅配弁当サービスが便利で、気に入った内容の弁当があれば繰り返し注文する事ができます。

弁当のおかずは食形態やメニューが豊富で、冷凍保存もできるので、その人がお気に入りの弁当を冷凍庫にストックしておくと、介護者が忙しい時や不在の時に活躍します。

>oharu(おはる)

oharu(おはる)

自身のスポーツ経験から管理栄養士を志し、大学卒業後総合病院の管理栄養士として8年勤務する中で高齢者の栄養サポートやがん患者に対する緩和ケア等のチーム医療にも参加。現在は幅広い年齢層を対象に予防医療の分野で活動中。

【所有資格】・管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・病態栄養専門管理栄養士・がん病態栄養専門管理栄養士