高齢者の低栄養を防ぐ!低栄養の要因を理解し予防する、食事のポイント

厚生労働省の報告によると、低栄養状態にある高齢者の割合は、男性で12.5%、女性19.6%にのぼります。

近年各メディアでも高齢者の低栄養は多く取り上げられ、免疫力の低下や寝たきりへの移行、認知機能の低下といった弊害も注目されています。

特に自宅介護においては低栄養の進行に気づきにくいため、やせている、短期間で急激に体重が減った、血液検査において血清アルブミンが低いといった低栄養のサインを見逃さない事や、日頃から低栄養を予防する食事を心がける事が大切です。

今回本記事では高齢者が低栄養に陥るその要因を紐解きながら、低栄養を防ぐ食事のポイントについてお伝えします。

・覚えておきたい、高齢者の低栄養3つのサイン

やせ BMI(※)20以下
急激な体重減少 3〜6ヶ月で5%以上の体重減少
血清アルブミンの低下 3.5g/dl以下

(※)BMI=体重÷(身長m×身長m)
(参考:厚生労働省 平成29年度国民健康・栄養調査の結果低栄養状態の指標について)

高齢者が低栄養に陥る要因

高齢者が低栄養に陥る要因

高齢者が低栄養に陥る要因には高齢者特有の身体機能の低下や経済的事情といった様々な背景があります。

介護者が低栄養のサインに早く気づきやすくするためにも、その要因を知っておく事も大切です。

ここでは、高齢者が低栄養に陥る要因についてお伝えします。

食欲不振や心理的要因による食事量の減少

高齢者の低栄養の要因として直結するのが食事量の減少です。

実際に、食事の全体量に対し、日常的に75%以下の摂取量である事が低栄養のリスクになると報告している研究もあります。

食事量が減少する理由も活動量の低下、噛む力や飲み込む力の低下、認知症やうつ病等による食事拒否、一人暮らしの場合は一人で食事をする事で会話の機会がなく、気分が沈みがちになる等様々です。

食事量が減少する事で当然必要なエネルギーや栄養素を身体に取り入れる事ができないため、生命維持のために身体の組織を消耗させ、低栄養状態に繋がります。

消化・吸収機能の低下

高齢になると消化液の分泌の減少や腸管粘膜の萎縮によって食事で摂った食べ物の消化や栄養素を消化・吸収する機能が低下しがちです。

消化・吸収機能の低下によって食事で摂った栄養素が充分に身体に取り込まれない事で低栄養状態に陥る可能性が高まります。

また、消化・吸収機能が低下すると胃のむかつきや下痢といった不快な症状が出る事が多く、その結果食欲不振を招き低栄養に繋がる事もあります。

嗜好や体力的、経済的事情による食事の偏り

一人暮らしの高齢者や、日中介護者が不在の際に高齢者自身が食事を用意する場合には、食事内容の偏りがしばしば見受けられます。

例として、ご飯と漬物のみ、カップラーメンのみ、菓子パンのみ、といった具合です。

この様な食事の偏りには、嗜好の問題だけではなく、調理する体力がない、経済的に食材を揃える余裕がないといった深刻な背景もあります。

例に挙げた様な偏った食事内容では、タンパク質やビタミン・ミネラルといった栄養状態の維持に欠かせない栄養素が日常的に不足してしまうため、低栄養状態を助長しまう事もありす。

高齢者の低栄養を防ぐ食事のポイント

高齢者の低栄養を防ぐ食事のポイント

高齢者の低栄養を防ぐためには、毎日の食事において栄養不足を回避する事や、食欲を維持・増進させる様な食事の雰囲気づくりをする事も大切です。

ここでは、高齢者の低栄養を防ぐ食事のポイントについてお伝えします。

主食・主菜・副菜を揃え、エネルギーを充分に摂る

低栄養を防ぐためには、食事内容に偏りがあれば主食・主菜・副菜が揃ったバランスの良い食事に整え、必要なエネルギーを充分に摂る事が必要です。

主食は生命活動のエネルギー源になり、タンパク源である主菜は私たちの筋肉や血液等といった身体の組織のもととなります。

野菜や海藻等を使用した副菜はビタミン・ミネラルの供給源となり、食事から摂った栄養素の吸収や利用を助けたり、皮膚の健康や免疫を維持する働きがあります。

食事全体のエネルギーが不足すると、筋肉を分解してエネルギーを産み出そうとするため、タンパク質が不足している時と同様に、筋肉量の減少や血液中のタンパク質で栄養状態の指標にもなる血清アルブミンの低下に繋がります。

食が細い高齢者は多くの品数を一度に食べる事が難しいという人も多いものです。

その様な時は、うどんに野菜や鶏肉を加えて煮込みうどんにしたり、味噌汁に野菜と豆腐を加え具沢山にする等、一品でも複数の栄養が摂れる献立がおすすめです。

また、間食でエネルギーやタンパク質を補っても良いでしょう。

必要なエネルギー量やタンパク質は体格や持病の有無等により個人で差がありますが、厚生労働省が発行している「日本人の食事摂取基準」において、標準的な体格の高齢者が必要とするエネルギー量は1500kcal、タンパク質は60g程度です。

しかし、発熱等がある場合には必要栄養量は増加するので、市販の栄養補助食品であれば1〜2本をめやすに栄養の補助をする事で身体のダメージを抑える事ができ、低栄養の予防にも繋がります。

・高齢者の食事1食分の食品別めやす量(1500kcal タンパク質約60gを想定)

食品の分類 主な食品 1食分の大まかな目安量
主食 ご飯、パン、麺 ・ご飯茶碗1膳(約150g)
・食パン 8枚切り2枚
・ゆでうどん 1袋
主菜 肉、魚、卵、豆腐 ・肉、魚 ・肉、魚 拳1つ分
・卵 1個
・豆腐 1/4丁(80〜100g )
副菜 野菜、きのこ、こんにゃく、海藻 ・野菜100g以上が理想
・きのこ、こんにゃく、海藻はその人の噛む力、飲み込む力に合わせて使用

楽しい雰囲気で食事をする

高齢者にとって、日常生活において人との関わりが減少したり会話が減る事は気分の落ち込みに繋がり、認知機能にも影響を及ぼすという報告があります。

この事から、普段の食事の雰囲気によって食欲低下や認知機能低下による食事拒否等が起こる可能性が充分にあり、周囲に人がいない状況で食事をする事は食事をどれくらい食べられているか、噛む力や飲み込む力が低下してきている事といった体調の変化にも気づきにくいといった事があります。

高齢者の食欲低下や低栄養のサインを見逃さないためにも、できるだけ高齢者一人での食事は避け、楽しい雰囲気での食事を心がけましょう。

作り置きや宅配弁当サービス、公的支援を利用する

介護者が不在の場合、高齢者自身が体力的に食事の用意が難しい場合には、温めるだけですぐ食べられる作り置きおかずをストックしたり、最近各社が展開する高齢者向け宅配サービスの利用を検討しても良いでしょう。

高齢者向け宅配弁当サービスはムース食から通常食まで豊富な食形態があり、管理栄養士が監修した栄養バランスが良い食事が解凍するだけで簡単に食べられるだけではなく、宅配スタッフが宅配の際に高齢者の様子を確認してくれるサービスを導入している会社もあります。

また、高齢者本人の嗜好によって食事の偏りが見られる場合にも、牛乳やヨーグルト、卵や野菜が入った具沢山のスープ等追加ですぐ食べられる物を用意しておく事で食事バランスの改善が期待できます。

経済的に不安がある場合は、経済状況の審査や一定の条件を満たす事が必要になりますが、生活保護等の公的支援を受けられる場合もあるため、役所の窓口や、ケースワーカー等へ相談するという方法もあります。

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高齢者の低栄養を予防するためには、栄養面だけではなく食べる楽しみも大切に

厚生労働省の報告では、低栄養状態にある高齢者の割合は、男性で12.5%、女性19.6%にのぼります。

近年、高齢者の低栄養は免疫力の低下や寝たきりへの移行、認知機能の低下といった弊害が起こる事が一般的にも知られる様になりました。

特に自宅介護においては低栄養の進行に気づきにくいため、やせている、短期間の急激な体重減少、血液検査において血清アルブミンが低いといった低栄養のサインを見逃さない事や、日頃から低栄養を予防する食事を心がける事が大切です。

高齢者が低栄養に陥る理由としては、食欲不振や心理的要因による食事量の減少、加齢により消化液の分泌減少や腸管粘膜の萎縮が起こる事での消化・吸収機能の低下、嗜好や体力的、経済的事情による食事内容の偏りといった事が主に挙げられます。

この事をふまえ、日頃から低栄養を予防するために心がけられる食事のポイントとして、品数は少なくとも主食・主菜・副菜が揃い、充分なエネルギーを確保できる食事内容にする事、高齢者の食欲や認知機能を維持し、低栄養のサインを見逃さないようにするためにもなるべく誰かと食卓を囲み、楽しい雰囲気で食事をする事、介護者が不在の場合は作り置きや高齢者向け宅配サービスの利用を視野に入れ、食事内容のバランスを維持する事といった方法があります。

また、経済的に不安がある場合には公的支援の利用を検討するという手段もあるため、役所の窓口やケースワーカー等に相談するのも一つの方法です。

>oharu(おはる)

oharu(おはる)

自身のスポーツ経験から管理栄養士を志し、大学卒業後総合病院の管理栄養士として8年勤務する中で高齢者の栄養サポートやがん患者に対する緩和ケア等のチーム医療にも参加。現在は幅広い年齢層を対象に予防医療の分野で活動中。

【所有資格】・管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・病態栄養専門管理栄養士・がん病態栄養専門管理栄養士