高齢者の栄養補給における課題とその対策。栄養状態改善のヒントとは!?

近年、免疫力や認知機能の低下、寝たきりといった高齢者の低栄養による様々な弊害がメディアでも注目され、自宅介護をする人の中でも家族や利用者が低栄養状態になっていないか心配といった人も多いでしょう。

実際に、インターネット上の介護相談においても、「高齢の親が食事を充分に摂る事ができず栄養状態が心配」「主治医から栄養状態の低下を指摘された」といった相談も良く目にします。

高齢者に限らず、その人の栄養状態を維持、改善するためには、適切な栄養補給をする必要性がありますが、高齢者の栄養補給には食が細くなる、食形態の調節によって食事の栄養量を維持する事が難しい、消化・吸収機能の低下により栄養が身体に取り込まれにくいといった課題も多くあります。

今回本記事では高齢者の栄養補給における課題と、それに対する具体的な対策についてお伝えします。自宅でも実践できる方法をお伝えしていますので、日頃から低栄養状態をより良くする事ができる栄養補給を心がけましょう。

高齢者の栄養補給における主な課題はこの3つ

高齢者の栄養補給における主な課題はこの3つ

高齢になると食が細くなる、噛む力や飲み込む力が低下する、消化・吸収機能が低下するといった身体機能の変化が起こりやすいです。

しかしこの様な変化は、栄養補給をする上での課題に繋がります。

ここでは、高齢者の栄養補給における主な3つの課題についてお伝えします。

食欲の低下や消化・吸収機能の低下により食事から充分な栄養が補給できない?

高齢になると活動量が減る事や、消化・吸収機能の低下により食欲が低下し、食が細くなってしまう人が多くいます。

また、消化・吸収機能が低下する事で実際に食べた食事量と比較して身体に取り込まれる栄養が減ってしまう事も多くあります。

この様に食事からの栄養摂取量の減少はエネルギー不足やタンパク質不足に直結し、栄養状態を低下させるため、高齢者における栄養補給の大きな課題となります。

噛む力や飲み込む力が弱くなり、水分が多い食事によって栄養量が減る?

噛む力や飲み込む力が弱くなり、軟らかく喉越しが良い食べ物でないとスムーズに食べられなくなる、といった事も高齢者の特徴として挙げられます。

しかし、軟らかく喉越しが良い食事は一般的に水分量が多く、同じ重量の普通食と比べるとエネルギーが格段と少なくなってしまいます。

身近な例としてご飯とお粥のエネルギーを比べたものを下の表に示していますが、お粥のエネルギーはご飯の半分以下になっている事が分かります。

これが肉や魚等のタンパク質を多く含む食品の場合は、水分を加えて軟らかく調理する事によって、エネルギーだけではなくタンパク質も減少してしまいます。

この様に、噛む力や飲み込む力が弱くなった高齢者にとって軟らかく喉越しが良い形態の食事は食べやすいですが、調理法によっては栄養量が減ってしまうといった事も課題となります。

エネルギー 水分量
ご飯150g 約250kcal 90g
お粥150g 約110kcal 125g

消化・吸収機能が低下する事で食事からの栄養が吸収されにくい?

加齢による身体的な変化として、消化液の分泌量の低下や、腸管粘膜の萎縮が生じやすいです。

食べ物は消化液によって身体に吸収されやすい形に分解され、腸管粘膜を通して体内に吸収されます。

そのため、消化液の分泌量が低下したり、腸管粘膜が萎縮する事で、食事からの栄養が吸収されにくくなります。

また、消化・吸収機能の低下により、胸焼けや下痢等の不快な腹部症状も起こりやすく、その症状が食欲不振に繋がる事も多くあります。

高齢者の栄養補給における課題への対策は!?

高齢者の栄養補給における課題への対策は!?

ここまでは、高齢者の栄養補給における課題についてお伝えしてきました。

普段の食事を栄養状態を維持、改善できる適切な栄養補給法にしていくためには、先にお伝えしていた課題の対策が必要不可欠となります。

ここでは、高齢者の栄養補給における課題への具体的な対策についてお伝えします。

栄養価の高い間食を取り入れて総合的に摂取栄養量を増やす

ある研究によると、食事の摂取量が通常の75%以下になると低栄養のリスクが高まるという報告があります。

食が細くなり一食の食事量が充分確保できない場合には、乳製品や卵を使用したプリンやカステラ、アイスクリーム等、エネルギーとタンパク質の両方を補える栄養価の高い間食を取り入れる事で総合的な摂取栄養量を増やすという方法があります。

また、間食や食事に牛乳を添えたり、汁物に卵を落とすといった方法でも一日を通しての摂取栄養量を増やす事ができます。

油脂や乳製品、卵、栄養調整食品等を使用して食形態を調整する

お粥やムース状の肉や魚等は水分量が多く、エネルギーやタンパク質が不足しがちになります。

それを改善するためには、高エネルギー、高タンパクな食品を使用して軟らかく喉越しが良い食形態に仕上げるといった方法があります。

例えば150gのお粥であれば、高エネルギーな粉末状の栄養調整食品を20g程加えたり、大匙1杯程度の油を加える事で同量のご飯のエネルギーに近づける事ができます。

また、肉や魚をミキサー等にかける際に、水分ではなく卵やマヨネーズ、高エネルギー、高タンパクの栄養補助食品をつなぎとして加える事で、エネルギーやタンパク質を減らさずに調理する事ができます。

調整前  調整後①  調整後②  参考値
お粥150g  約110kcal +油大匙1
約220kcal
+栄養調整食品20g
約190kcal
※ご飯150g
約250kcal
ムース食(魚) 鰈50g、だし汁、長芋使用

約60kcal
タンパク質10g

鰈50g、豆腐25g、マヨネーズ小匙1使用
約80kcal
タンパク質11g
鰈50g、栄養補助食品20ml、小麦粉小匙1使用
約120kcal
タンパク質12g
  ※煮魚
(鰈80g)
約80kcal
タンパク質13g

消化・吸収が良い食品を選んで使用する

食品の中には消化・吸収が良い食品とそうではない食品があります。

そのため、消化・吸収機能が低下した高齢者が食事からの栄養を身体に取り込みやすくするためには、消化・吸収が良い食品を選んで使用する事が大切です。

特に配慮したい食品として、肉類や油脂が挙げられます。

肉類に関しては体内での利用効率が良い、良質なタンパク質を豊富に含むため高齢者も積極的に摂りたい食品の一つですが、脂身は消化不良を起こしやすく、下痢等の症状に繋がりやすいといった特徴があります。

肉類を選ぶ際には豚バラ肉類や牛バラ肉、鶏皮等脂身の多い部位を避けたり、湯通ししてから調理する等の工夫をしましょう。

また、油脂に関してもラード等の融点が低い油は消化が悪く、胸焼け等を起こしやすいため避けるのがおすすめです。

消化・吸収に優れた油としてはMCTオイル等の名称で販売されている中鎖脂肪酸を含む油や、バターやマヨネーズ等の乳化された油が挙げられます。

油は少量でも高エネルギーであるため、食が細い高齢者の食事も比較的簡単にエネルギーを上げる事ができます。消化・吸収の良いものを選び、効果的に使用しましょう。

高齢者の栄養補給には多くの課題あり。適切な対策で状況改善を

近年、高齢者の低栄養による様々な弊害がメディアでも注目され、インターネット上の介護相談においても、「高齢の親が食事を充分に摂る事ができず栄養状態が心配」「主治医から栄養状態の低下を指摘された」といった相談も良く目にするようになりました。

栄養状態を維持、改善するためには、適切な栄養補給をする必要性がありますが、高齢者の栄養補給には食が細くなる、水分量の多い食形態によって食事の栄養量を維持する事が難しい、消化・吸収機能の低下により栄養が身体に取り込まれにくいといった課題も多くあります。

これらの課題への対策として、エネルギーやタンパク質が補給できる栄養価の高い間食を取り入れる、食形態を調節する際に水分の代わりに油脂や卵、乳製品、栄養調整食品等を使用し栄養量の減少を防ぐ、脂肪が多い肉類やラード等の融点が低い油といった消化が悪い食品を避け、反対にマヨネーズやバター等の乳化した油、中鎖脂肪酸を含む油等高齢者にも消化・吸収しやすい食品を選んで使うといった方法があります。

特に油脂類は少量でも高エネルギーなので、食が細い高齢者の食事や水分によって栄養量が減少しやすいムース食等のエネルギーの確保に活躍します。

>oharu(おはる)

oharu(おはる)

自身のスポーツ経験から管理栄養士を志し、大学卒業後総合病院の管理栄養士として8年勤務する中で高齢者の栄養サポートやがん患者に対する緩和ケア等のチーム医療にも参加。現在は幅広い年齢層を対象に予防医療の分野で活動中。

【所有資格】・管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・病態栄養専門管理栄養士・がん病態栄養専門管理栄養士