運動と栄養はセットで考えよう!高齢者が運動で健康を維持するための食事のポイント

厚生労働省の調査によると、運動習慣がある65歳以上の高齢者は男性46%、女性39%と若い世代や働く世代と比較して高い割合を示しています。

また、運動の習慣はなくとも、施設等でリハビリを受けている場合も強度によっては運動と同等の栄養が必要になります。

しかし高齢になると加齢による消化・吸収機能の低下等によりしっかり食べているつもりでも、実は運動で消費する分の栄養が足りていないといった場合もあるのです。

運動習慣がありながらも栄養不足に陥ると、筋肉量の減少をはじめとした全身的な栄養状態の低下や骨がもろくなる、貧血、集中力や記憶力の低下といった様々な弊害が起こります。

そのため、運動習慣がある場合は、健康を維持していくためには運動量に見合った食事量や身体の回復を促す食事の仕方に配慮が必要です。

今回本記事では栄養不足の状態で運動を行う事で起こる弊害や、運動で健康を維持していくために押さえておきたい食事のポイントについてお伝えします。

(参考:厚生労働省 平成29年度国民健康・栄養調査の結果

運動しているのに栄養が充分でないとどうなる??

運動しているのに栄養が充分でないとどうなる??

高齢になると消化・吸収機能の低下等によって一般的な成人と比較して栄養が不足しやすい状況になります。

栄養が不足している状態で運動やリハビリを行う事で、筋肉量の減少による体重減少等、様々な弊害が起こりやすくなります。

ここでは栄養不足のまま運動を続ける事で起こりやすい弊害についてお伝えします。

体重が減少し、筋肉が痩せてしまう事もある

運動をしているにも関わらず食事からのエネルギーやタンパク質が不足していると、運動で消費したエネルギーが補われない事で痩せる必要がない人でも体重が減ってしまったり、体脂肪が減少しエネルギーを産み出す事ができなくなると筋肉を分解してエネルギーを産み出すため、筋肉が痩せてしまう事もあります。

必要以上の減量や筋肉量の減少は全身の栄養状態の低下や思う様に身体を動かす事ができなくなるといった事態を招きやすいです。

骨折や貧血を起こしやすくなる

カルシウムや鉄分は、普段から不足しやすい栄養素です。

これらの栄養素が不足している状態で運動を行うと、骨に負荷が加わる事で骨折しやすくなったり、汗に鉄分が排泄されたり足の衝撃によって赤血球が破壊される事によって貧血を起こしやすくなったりすることもあります。

骨折すると炎症反応によって低栄養状態に陥りやすくなる他、部位によっては寝たきりの原因となる事もあります。

貧血は動悸、息切れにより運動のパフォーマンスが低下したり、疲れやすくなりまた、物忘れをしやすくなるといった症状が現れる事があります。

集中力や記憶力が低下しやすくなる

運動習慣がある人では、運動習慣が無い人と比較してエネルギーやタンパク質の消費量が多くなります。

運動習慣があるにも関わらず食事から摂るエネルギーやタンパク質等の栄養素が不足すると、脳のエネルギー源となる糖質が不足する事や、タンパク質は神経伝達物質のもととなっているため、集中力や記憶力が低下しやすくなる事があります。

特に集中力の低下は運動のパフォーマンスの低下にも繋がります。

高齢者が運動で健康を維持するための食事のポイント

高齢者が運動で健康を維持するための食事のポイント

ここまでは栄養が不足した状態で運動を続ける事で起こりやすい弊害についてお伝えしてきました。

その様な弊害を起こさず、高齢者が運動で健康を維持していくためには運動量に見合った食事量や食事の仕方に配慮が必要です。

ここでは、運動習慣がある高齢者やリハビリを行なっている高齢者が健康を維持するために押さえておきたい食事のポイントをお伝えします。

運動で消費するエネルギーをしっかり補う

運動で消費するエネルギーをしっかり補う

運動を続けながら健康を維持するための食事のポイントの一つとして、運動で消費するエネルギーをしっかり補う事は欠かせません。

そのためには、運動で消費するエネルギーを含めた消費エネルギーを知る必要があります。

運動による消費エネルギー量を算出する際の指標となるのが「メッツ」という運動強度の単位です。

運動を考慮した消費エネルギー量は

運動による消費エネルギー量(kcal)=1.05×体重(kg)×メッツ×時間(h)

という式で求める事ができます。例えば、65kgの人がボーリングを1時間行った場合の消費エネルギー量は

1.05×65kg×(3.0〜3.9)×1=205〜270kcal

となります。

参考までに、高齢者の標準的な必要エネルギーは1500kcal程度なので、このケースでは1705〜1770kcalのエネルギー量が必要となるという事です。

運動で消費したエネルギーは、食事量を増やしたり、間食を取り入れる事で補いましょう。

このケースの場合、例としておにぎり1つとチーズ1個で運動で消費するエネルギーを補う事ができます。

・身体活動別メッツ(運動の強度)

1.0 ベッド上安静、睡眠
2.0〜2.9 ストレッチ、ヨガ、キャッチボール
3.0〜3.9 歩行、ボーリング、ゴルフ
4.0〜4.9 太極拳、卓球、バドミントン
5.0〜5.9 野球、ソフトボール
6.0〜6.9 ジャズダンス、エアロビクス
7.0以上 階段を上がる、ジョギング、テニス、サイクリング(時速20km)

※ベッドサイドでのリハビリ:1〜3メッツ
機能訓練室でのリハビリ:1.5〜6メッツ程度
(参考:東村山

日頃からタンパク質、カルシウム、鉄分等をしっかり摂る

日頃からタンパク質、カルシウム、鉄分等をしっかり摂る

運動習慣がある人が栄養不足によって低栄養や骨折、貧血等といったトラブルを防ぐためには、エネルギーの他にタンパク質、カルシウム、鉄分等の栄養素をしっかり摂る事が重要です。

中でもタンパク質は運動習慣の有無によって必要量が増加するため、自分に必要なタンパク質量を知っておきましょう。

日頃趣味として楽しむ程度の運動習慣であっても、体重1kgあたり1.2〜1.5gのタンパク質が必要です。

これは、機能訓練室で行うリハビリについても同様です。

体重65kgの人であれば、この場合1日に必要なタンパク質量は78〜98gとなり、高齢者の標準的なタンパク質の必要量として示される事が多い60gを大幅に上回る事が分かります。

特に肉や魚、大豆製品、乳製品には良質なタンパク質が含まれるので積極的に摂りましょう。

カルシウムについては、乳製品に含まれるカルシウムは吸収率が良いため、食事や間食で毎日摂るのがおすすめです。

鉄分は肉や魚等の動物性食品に含まれるヘム鉄と小松菜等の植物性食品に含まれる非ヘム鉄があり、非ヘム鉄は単体で摂るとヘム鉄に比べ吸収率が低いという特徴がありますが、非ヘム鉄は動物性のタンパク質やビタミンCを多く含む果物等と合わせて摂る事で吸収率を上げる事に期待できます。

・良質なタンパク質を含む食品

タンパク質(1食分のめやす量あたり)
約18g(1尾約80g)
さば水煮 約21g(2/1缶100g)
木綿豆腐 約7g(1/4丁:100g)
納豆 約8g(1パック50g)
約7g(1個約60g)
牛乳 約7g(コップ1杯200ml)
ささみ肉 約23g(100g)
鶏挽肉 約21g(100g)
豚ロース 約19g(100g)
合い挽肉 約19g(100g)
牛肩ロース 約18g(100g)
牛もも肉 約21g(100g)

・カルシウムが豊富な食品(推奨量 男性:700mg 女性:600mg)

1食あたりのめやす量 カルシウム含有量
 牛乳 コップ1杯(200ml) 220mg
スキムミルク 大さじ4杯(24g) 264mg
ヨーグルト 100g 120mg
プロセスチーズ 1切れ(20g) 126mg
小松菜 1/4束(70g) 119mg
1尾(80g) 56mg
さくらえび(干し) 大さじ1杯(5g) 100mg
木綿豆腐 3/1丁(100g) 120mg
納豆 1パック(50g) 45mg
胡麻 大さじ1強(10g) 120mg

・鉄分が豊富な食品(推奨量 男性:7.0mg 女性:6.0mg)

1食あたりのめやす量 鉄分含有量
豚レバー 50g 6.5mg
牛ヒレ肉 100g 2.5mg
かつお 80g 1.5mg
いわし 80g 1.4mg
無調整豆乳 コップ1杯(200ml) 2.4mg
小松菜 1/4束(70g) 2mg
納豆 1パック(50g) 1.7mg
ゆでそば 1袋(230g) 1.8mg
あさり 10粒 1.5mg

(参考:日本人の食事摂取基準2020の概要

運動の後はできるだけ早く食事や間食を摂る

運動の後はできるだけ早く食事や間食を摂る

エネルギーの消費や筋肉に刺激を受けた身体を回復させ、健康を維持するためには、運動後の速やかな栄養補給が重要です。

運動後は45分以内をめやすに食事や間食を摂る事を心がけましょう。

運動後にすぐ食事を摂る事が難しい場合は、ジョギング等のエネルギーを多く消費する運動の後にはエネルギー源となる糖質を含むおにぎりや果物、筋力トレーニング等の筋肉に刺激を与える運動の後には牛乳等のタンパク質を含む食品を間食として摂るのがおすすめです。

運動と栄養のバランスを取り、高齢者もより活きいきと

厚生労働省の調査によると、運動習慣がある65歳以上の高齢者は男性46%、女性39%と若い世代や働く世代と比較して高い割合を示しています。

また、施設等でリハビリを受けている場合も強度によっては運動と同等の栄養が必要になります。

高齢になると加齢による消化・吸収機能の低下等により栄養不足に陥りやすく、運動で消費する分の栄養が足りていないといった場合もあるのです。

栄養不足の状態で運動を続けると、筋肉量の減少をはじめとした全身的な栄養状態の低下や骨折、貧血、集中力や記憶力の低下といった様々な弊害が起こります。

そのため、運動習慣がある場合は、健康を維持していくためには運動量に見合った食事量や身体の回復を促す食事の仕方に配慮が必要です。

エネルギーやタンパク質の必要量は運動習慣によって増加します。

運動の強度によっても必要量は異なるため、自分に必要な栄養量を知り、食事量を増やす事や間食を取り入れる事でエネルギーやタンパク質を補う事が大切です。

また、骨折や貧血を防ぐためには普段から不足しやすいカルシウムや鉄分をしっかり摂りましょう。

エネルギーの消費や筋肉に刺激を受けた身体を回復させ、健康を維持していくためには、運動後の速やかに食事や間食等で栄養補給をする事が大切です。

>oharu(おはる)

oharu(おはる)

自身のスポーツ経験から管理栄養士を志し、大学卒業後総合病院の管理栄養士として8年勤務する中で高齢者の栄養サポートやがん患者に対する緩和ケア等のチーム医療にも参加。現在は幅広い年齢層を対象に予防医療の分野で活動中。

【所有資格】・管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・病態栄養専門管理栄養士・がん病態栄養専門管理栄養士