高齢者の食事、タンパク質不足は何故怖い?不足を回避する食事法をご紹介!

自宅で介護している高齢のご家族が、最近体重が減ってきた、歩くのが遅くなったという事はありませんか?

この様な症状は、高齢者にとってよくある事として見過ごされがちですが、食事からその人にとって必要なタンパク質を充分に摂る事ができていない「タンパク質不足」の状態である可能性もあります。

最近ではメディアやインターネット上の記事でも、高齢者のタンパク質不足による身体機能の低下や、筋肉量が減る事で活動性が低下し、更に食事量や栄養状態が低下した結果寝たきりになりやすくなるという「フレイル」と呼ばれる状態を危惧する内容をよく目にする様になりました。

「フレイル」の状態では認知機能や免疫にも影響するため、その人の健康寿命を大きく左右する要素でもあるのです。

高齢者がたんぱく質不足に陥る背景には、加齢によって食が細くなる、食べ物の消化・吸収機能が低下する、咀嚼・嚥下機能の低下によって肉や魚等の良質なタンパク源が、食べにくくなるといった理由があります。

また、タンパク質不足は軽度の状態では症状として現れにくく、自宅介護では特に早い段階で気付きにくいため、毎日の食事からタンパク質不足を防いでいく必要があります。

今回本記事では、高齢者のタンパク質不足によって招かれる心身への影響や、知っておきたい高齢タンパク質不足を予防する食事法についてお伝えします。

高齢者のタンパク質不足で起こりやすいフレイルとは?知っておきたいその怖さ

高齢者のタンパク質不足で起こりやすいフレイルとは?知っておきたいその怖さ

高齢者のタンパク質不足が長期間続くと、筋肉量の減少から活動量の低下を始め、様々な心身への悪循環が生まれます。

これをフレイルと呼び、高齢者の認知機能や寿命を左右する怖さがあるのです。

ここからは、高齢者のタンパク質不足によって起こりやすい悪循環である、フレイルの症状についてお伝えします。

タンパク質不足で起こりやすいフレイルの症状①筋肉量が減少する

タンパク質は私たちの筋肉をはじめとした体の組織を作り、維持する働きがある事が知られているでしょう。

よって、タンパク質が不足する事で筋肉が作られないだけではなく、食事量そのものが減っている場合は特に筋肉がどんどん減少していきます。

高齢になり体重が減ってきたという場合は原因として皮下脂肪の減少もありますが、筋肉もあわせて減少しているという場合が多くあります。

タンパク質不足で起こりやすいフレイルの症状②活動量が減少し、食事量が減る

タンパク質不足により筋肉量が減少すると、歩行等の運動機能が低下し、ベッド上で過ごす事が多くなる等活動量が減少する傾向が見られます。

また、活動量が減少する事で空腹を感じにくくなり、食事量が減少する事にも繋がります。

食事量が減少し、タンパク質やエネルギー不足が起こると、更に筋肉量が減少するという悪循環が生まれる事もあります。

タンパク質不足で起こりやすいフレイルの症状③栄養状態や免疫機能が低下

タンパク質不足によって引き起こされる症状として、栄養状態や免疫機能の低下も挙げられます。

タンパク質は血液のもととなる他、免疫を保つ働きをしています。

タンパク質が不足する事で血液が充分に作られず貧血や免疫力の低下をきたす他、血液の栄養指標である血液中のタンパク質「アルブミン」の減少が見られる事も多くあります。

タンパク質不足で起こりやすいフレイルの症状④認知機能の低下が起こる事もある

ここまで筋肉量の減少や栄養状態の低下といったタンパク質不足によって起こりやすいフレイルの症状をお伝えしてきましたが、これらの症状は全て連動していて、悪循環を引き起こすといった特徴があります。

その結果、活動量の減少等に伴って認知機能の低下が起こる事も珍しくありません。

認知機能が低下する事で寝たきりに繋がりやすくなったり、食事を食べたがらない等といった食行動への影響も見られる事も多くなり、更にタンパク質をはじめとした栄養不足が起こりやすくなります。

タンパク質不足を予防するために、自分に必要なタンパク質はどれくらいか知ろう

タンパク質不足を予防するために、自分に必要なタンパク質はどれくらいか知ろう

タンパク質を予防するためには、まずは自分に必要なタンパク質はどれくらいか知る事が大切です。

学会や各国の指針では、成人におけるタンパク質の必要量は体重1kgあたり1.0g〜1.2gとされています。

健康な高齢者においてもこの基準は同じで、高齢者では摂取したタンパク質から筋肉を作る能力が低下しているため、筋肉量を維持・増量していくためには成人と比較してタンパク質の必要量は多いという見解もあります。

例えば、体重60kgの人であれば60(kg)×1.0〜1.2(g)=60〜72(g)となります。

また、厚生労働省が示している日本人の食事摂取基準では、摂取エネルギーの15〜20%程度をタンパク質から摂取する事を目標としています。その量はその人の体格に左右される部分はあるものの、男性で1日50〜60g、女性で1日40〜50g程度です。

この事から、1食あたり少なくとも20g程度はタンパク質を摂る必要があるという事になります。

下の表は、各食品1食のめやす量あたりのタンパク質量です。1食に1品はタンパク質を多く含む食品を取り入れる事で、タンパク質の不足を防ぎやすくなります。

※腎機能が低下している人や持病があり医師から食事について指示がある場合はこの限りではないので、主治医の指示を守りましょう。

【食品1食あたりのタンパク質量】

タンパク質(1食分のめやす量あたり)
精白米 約4g(ご飯150g)
食パン 約5.5g(食パン6枚切り1枚 60g)
うどん 約6g(ゆでうどん1玉230)
ブロッコリー 約2g(可食部50g)
アスパラガス 約1g(2本 可食部約40g)
約18g(1尾約80g)
さば水煮 約21g(2/1缶100g)
木綿豆腐 約7g(1/4丁:100g)
納豆 約8g(1パック50g)
約7g(1個約60g)
牛乳 約7g(コップ1杯200ml)
ささみ肉 約23g(100g)
鶏挽肉 約21g(100g)
豚ロース 約19g(100g)
合い挽肉 約19g(100g)
牛肩ロース 約18g(100g)
牛もも 約21g(100g)

(参考:日本サルコペニア・フレイル学会 サルコペニア(※)診療ガイドライン
(参考:厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020 1-2たんぱく質

※サルコペニア…主に加齢によって筋肉量が減少し、筋力の低下や身体機能の低下が起こっている状態。

高齢者のタンパク質不足が起こりやすいその理由とは?

高齢者のタンパク質不足が起こりやすいその理由とは?

高齢者のタンパク質不足が起こる背景には、活動量の減少や消化・吸収機能の低下により食事量が減る事や、消化管の機能低下により食事から摂ったタンパク質の吸収率が低下する事、噛む力や飲み込む力の低下により良質なタンパク源である肉や魚等が食べにくくなる事、菜食に偏るといった食事バランスの乱れ等があります。

この事については、以下の記事にまとめていますのでご覧下さい。

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高齢者のタンパク質不足を防ぐ食事法

高齢者のタンパク質不足を防ぐ食事法

ここまでは、高齢者がタンパク質不足に陥る背景やタンパク質の必要量についてお伝えしてきました。

高齢者のタンパク質不足を防ぐには、高齢者にも食べやすい形態や、消化・吸収に配慮した食材を選ぶといった工夫が必要です。

ここからは、高齢者のタンパク質不足を考えた食事法についてお伝えします。

一食に一品は必ずタンパク源を取り入れ、不足分は間食で補う

食事を手軽に済ませようとしたり、粗食や菜食に偏ると、ご飯、パン、麺等の主食や野菜のおかずに偏り、タンパク源となる肉や、魚、卵、大豆製品等は不足しがちになります。

しかし、1食分のめやす量あたりのタンパク質量は、主食1食分は約5g、野菜の単品料理は多くても1品1〜2gであり、これらだけでは1食に摂りたいタンパク質約20gには届かない事が分かります。

また、主食や野菜に含まれるタンパク質は体内での利用効率が悪いので量をたくさん食べたからといって有効に利用されないといった特徴があり、筋肉をはじめとした身体の組織の維持等に繋がりにくいと言えます。

一方、肉や魚等動物性の食品は多くの場合1食分の重量で1日に必要なたんぱく質量の1/3が摂れ、体内での利用効率も高いという特徴があります。

この事から、毎食肉や魚等の料理を取り入れる、歯が弱い場合等は大豆製品や卵、乳製品を組み合わせて摂るといった様に、タンパク源になる食品を必ず取り入れる様にしましょう。

そうする事で、1日を通して不足なくタンパク質をとる事ができます。

また、お伝えしてきた様に高齢者は活動量の低下や消化吸収機能の低下により食事量が減少しがちです。

食事量の減少により食べられるタンパク源の量が減ると、当然必要量を摂る事が難しくなります。

そのような場合は、3食で不足したエネルギーやタンパク質を間食で補うといった方法があります。

間食 サンドウィッチ 間食 プリン

エネルギーやタンパク質を補える間食の例として、牛乳やヨーグルト等の乳製品や、卵を使用したプリン、ツナ缶等を使用した小さなサンドウィッチ等があります。

また最近は、少量で高タンパク高エネルギーのドリンクタイプの栄養補助食品がドラッグストアーやコンビニ等で手軽に購入する事ができます。

栄養補助食品は常温保存が可能なので、いくつか常備しておくと間食の他、食事量が特に落ち込みやすい体調不良時等にも活躍します。

消化・吸収が良く、利用効率が高いタンパク質をとる

高齢者がタンパク質不足に陥る理由の一つとして、消化液の分泌量低下や腸管粘膜の萎縮による消化・吸収機能の低下が挙げられる事もお伝えしてきました。

特に胃もたれや下痢等、胃腸の不調が見られる場合には、動物性脂肪が多すぎる肉類の脂身等は取り除く事や、ささみ肉や白身魚等脂肪が少ない食品や、卵や豆腐等の比較的消化が良い食品からタンパク質を摂るといった方法もあります。

その他、高齢者がタンパク質を摂る際に意識したい点として「必須アミノ酸を多く含む、アミノ酸スコアが高い食品を意識的に取り入れる」といった点があります。

タンパク質はアミノ酸という分子が繋がる事で構成されていますが、そのうちの9種類は体内で効率良く利用され、体の組織や免疫を維持する働きをもつ必須アミノ酸と呼ばれ、身体の中では作る事ができず、食事から摂る事が必要です。

そのため、消化・吸収機能が低下した高齢者は特に、体内で効率良く利用される必須アミノ酸をバランス良く含む食品を摂る事が大切です。

この必須アミノ酸のバランスを示したものを「アミノ酸スコア」と呼び、値が高い程バランスが良い事を示します。

肉、魚、卵、豆腐、納豆等の主菜となる食品や牛乳・ヨーグルトは100で、必須アミノ酸をバランス良く含み、ご飯やパン、うどん、野菜類はアミノ酸スコアが高くなく、単体で食べても期待するタンパク質の働きが得られにくいと言えます。

消化・吸収が良く、利用効率が高いタンパク質をとる ヨーグルト

しかし、アミノ酸スコアが高くない食品も、アミノ酸スコアが高い食品と合わせて食べる事、体内におけるタンパク質の利用効率が上がるので、主食や野菜に偏らず、肉や魚、卵や大豆製品を意識的に摂る事が大切です。

【食品のアミノ酸スコア(一例)】

食品 アミノ酸スコア
 肉、魚、卵、豆腐、納豆 100
牛乳・ヨーグルト 100
ブロッコリー 80
アスパラガス 68
精白米 65
食パン 44
うどん 41

肉や魚は柔らかい種類や部位を選び、調理の工夫で食べやすく仕上げる

消化・吸収が良く、利用効率が高いタンパク質をとる

噛む力や飲み込む力の低下によって良質なタンパク質を豊富に含む肉や魚が食べにくくなっている場合は、柔らかい種類や部位、適度に脂が乗った種類や部位といった、そのものが食べやすい肉や魚を選ぶ事や、皮や脂身等の弾力がある部分を取り除く、タンパク質分解酵素等を含む漬けだれに漬けて肉質を柔らかくするといった下処理の工夫の他、身が塩は加熱する直前にふる、パサつきを防ぐために肉や魚の表面に粉をまぶす、低温でじっくり調理する等、柔らかく食べやすい仕上がりとなる様食品の選択や調理法を工夫します。

固形の状態が食べにくい場合は、挽肉や魚に卵やマヨネーズといった油脂類や牛乳をつなぎとして加えてミキサーにかけた後蒸し上げる事で、ムースの様な仕上がりになり、咀嚼・嚥下機能が特に低下した人にも食べやすい形態に仕上げる事ができます。

【肉や魚を食べやすくする工夫】

・柔らかい種類や部位を選ぶ(豚ヒレ肉、鶏ささみ肉、挽肉等)
・適度に脂が乗った部位を選ぶ(ロース、挽肉等)
・皮や弾力のある脂身は取り除く
・フォーク等で身に穴を開けて筋切りをする
・ヨーグルト(肉の水分を閉じ込める)、麹、キウイ(肉のたんぱく質を分解する)等が入ったタレに漬け込み、肉質を柔らかくする
・塩は焼く直前に使う(置いておくと身が硬くなる)
・表面に小麦粉や片栗粉をまぶして焼き、肉汁の流出を防ぐ
・中火でじっくり焼く(肉汁が流れにくい)
・挽肉はつなぎを混ぜて焼く
・適度に脂が乗った種類を選ぶ(さば、ぶり、鮭、まぐろ等)
・皮は取り除く
・脂が少ない白身魚等はマヨネーズや卵等を混ぜてすり身にし、蒸す
・塩は焼く直前に使う(置いておくと身が硬くなる)
・魚は焼き過ぎない様にする、煮る、蒸す

高齢者向け宅配弁当なら、手軽にタンパク質もしっかり摂れる!

高齢者向け宅配弁当なら、手軽にタンパク質もしっかり摂れる!

栄養が不足なく、バランスの良い食事を提供する事は高齢者やその他の家族にとっても必要な事です。

しかし、多忙な毎日の中で食材の選択や献立作成、高齢者でも食べやすい軟らかさで調理するといった事が、難しい日もあるでしょう。

その様な時は最近各社が展開している「高齢者向け宅配弁当サービス」の利用が便利です。

この高齢者向け宅配弁当の献立は管理栄養士が監修し、高齢者が必要とするエネルギーや栄養量に合わせて栄養価計算しています。

もちろんタンパク質も不足なく摂る事ができ、解凍してすぐ食べられる手軽さやメニューや食形態が豊富である事から、介護者にとっても高齢者にとっても満足度が高い食事となる事でしょう。

高齢者の食事はタンパク質が一つのカギ。不足しない食事法を実践しよう!

高齢者における最近体重が減ってきた、歩くのが遅くなったという症状は、高齢者にとってよくある事として見過ごされがちですが、食事からその人にとって必要なタンパク質を充分に摂る事ができていない「タンパク質不足」の状態である可能性もあります。

最近では高齢者のタンパク質不足による身体機能の低下や、筋肉量が減る事で活動性が低下し、更に食事量や栄養状態が低下した結果寝たきりになりやすくなる「フレイル」の状態が、専門家だけではなく各メディアでも取り上げられ、危惧されています。

「フレイル」の状態では認知機能や免疫にも影響するため、その人の健康寿命を大きく左右する要素でもあります。

高齢者がタンパク質不足に陥るその理由は、加齢に伴って食が細くなる、食べ物の消化・吸収機能が低下する事や、噛む力や飲み込む力の低下によって良質なタンパク源となる肉や魚が食べにくくなるといった事でタンパク質が不足しやすい等様々です。

また、軽度のタンパク質不足は症状として現れにくく、自宅介護では特に早い段階で気付きにくいため、毎日の食事からタンパク質不足を予防していく事も大切です。

高齢者がタンパク質を充分に摂るための食事法として、一食のうちに必ずタンパク源を取り入れ、不足分は間食で補う、消化・吸収が良い低脂肪の部位を選び、体内利用率が良いアミノ酸スコアが高いタンパク源を選ぶ、食材の選択や調理法の工夫によって噛む力や飲み込む力が弱くなった高齢者にも肉や魚等のタンパク源を食べやすくするといった方法があります。

しかし、タンパク質を不足なく摂るための食材選択や献立作成、食べやすく調理する事は状況によって難しい場合もあります。その様な状況の時は、各社が展開し、高齢者に必要なエネルギーや栄養量に基づいて栄養価計算がされ、解凍するだけで手軽に食べられる「高齢者向け宅配弁当サービス」の利用が便利です。

>oharu(おはる)

oharu(おはる)

自身のスポーツ経験から管理栄養士を志し、大学卒業後総合病院の管理栄養士として8年勤務する中で高齢者の栄養サポートやがん患者に対する緩和ケア等のチーム医療にも参加。現在は幅広い年齢層を対象に予防医療の分野で活動中。

【所有資格】・管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・病態栄養専門管理栄養士・がん病態栄養専門管理栄養士