高齢者が食事からの摂取カロリー不足に陥る原因とは!?その対策もご紹介!

厚生労働省の報告では、BMIという体格指数から「やせ」と判定される高齢者の割合は、男性で12.5%、女性19.6%にのぼっています。

やせているという状態は、単に身長と比較して体重が少ないという状態ではなく、筋肉量の減少や血中のタンパク質(アルブミン)の減少等、全身の栄養状態の悪化をきたしている場合も多くあります。

では高齢者がやせてしまう理由は何でしょうか?

想像がついている方も多い事と思いますが、生命維持や身体活動によって消費されるカロリーに対し、摂取するカロリーが不足している状態が続くと体脂肪の減少や筋肉量が減少し、やせの大きな要因の一つとなります。

高齢者の摂取カロリー不足の背景には年齢による身体的変化や食形態の変化、食に対する認識等様々な事があり、対策が必要です。

本記事では高齢者が食事からの摂取カロリー不足に陥る主な原因やそれに対する対策をお伝えし、高齢者の低栄養を防ぐ食生活を紐解きます。

(参考:厚生労働省 平成29年「国民健康・栄養調査」の結果)

高齢者が食事からの摂取カロリー不足に陥る主な原因は3つ

高齢者が食事からの摂取カロリー不足に陥る主な原因は3つ

高齢になると以前の様に食欲が湧かない、一度に多くの量を食べられない、噛む力や飲み込む力が低下するといった身体的変化が起こりやすいです。

また、自己流の健康思考や「高齢だから食事は少なくてもよい」といった思い込みをしている高齢者も少なくありません。

この様な背景は、高齢者の摂取カロリー不足に繋がります。ここでは、高齢者が食事からの摂取カロリー不足に陥る3つの主な原因についてお伝えします。

食が細くなり、食事の全体量が減る

高齢になると足腰が弱くなる等といった身体機能の低下によって活動性が減り、食欲も低下しやすくなります。

食欲の低下により食事量が減る事は食事からの摂取カロリー不足に直結します。

3食だけでは必要なカロリーや栄養素を充分に摂取する事が難しくなるので、1日を通した食事からの摂取カロリーの不足を防ぐための対策が必要な場合があります。

お粥や水分が多い食事によってカロリーを摂りにくくなる

高齢者の中には噛む力や飲み込む力が低下している事で、主食はお粥、おかずも水分を多く加えたトロミのある形状である事も多いでしょう。

食べやすい形態にする事で高齢者も食事を完食でき、安心する介護者も少なくはありません。

しかし、下の表でお粥を例に示している通り、噛む力や飲み込む力が低下した高齢者も食べやすい形態の食事は水分量が多い分、重量当たりのカロリーは少なくなります。

1食分のお粥のカロリーはご飯の半分以下なので、1食分のご飯と同等のカロリーを摂取するためには、いつもの倍量以上のお粥を食べなければいけないといった計算になります。

よって、普段から軟らかい形態の食事を食べている高齢者の場合、しっかり食べているつもりでもカロリー不足に陥っている事も多いのです。

エネルギー 水分量
ご飯150g 250kcal 90g
お粥150g 約110kcal 125g

自己流の健康法や食への思い込みによって食事量を減らしてしまう

高齢になると持病のため食事に配慮が必要になり自己流で食事を減らしてしまったり、「以前と比べて動かなくなったから」「高齢だから」といった理由で「食事は少なくても良い」という考えを持つ高齢者も少なくありません。

この様な自己流の健康法や食への思い込みによっても食事からの摂取カロリーが不足してしまうケースは多くあります。

持病がある場合食事量やその内容については主治医の指示のもと、管理栄養士に相談する事が大切です。

また高齢者であっても、その人な体格や活動量によって必要なカロリーは異なるため、自分に必要なカロリーを把握せず、安易に食事量を減らしてしまう事は危険な状態になりえます。

高齢者の食事からの摂取カロリー不足を防ぐ3つのポイント

高齢者の食事からの摂取カロリー不足を防ぐ3つのポイント

高齢者の低栄養状態のサインともなる「やせ」の状態を防ぐには、その人の生命維持と身体活動で消費されるカロリーに対する食事からの摂取カロリー不足を防ぐ事が大切です。

ここでは、前章でお伝えした高齢者が食事からの摂取カロリー不足に陥る原因へのポイントについてお伝えします。

間食を取り入れてカロリーを補う

食欲不振等によって食事の全体量が減っている場合には、3食で必要なカロリーの全てを摂取しようとせず、午前、午後それぞれ1回ずつといった様に間食を取り入れ、カロリー摂取の頻度を増やすといった方法があります。

食事の全体量が減っている多くの場合でカロリーだけではなく肉や魚、卵や大豆製品のおかずに多く含まれるタンパク質の不足も見られる事から、間食においてもカロリーの他、タンパク質も補えるものがおすすめです。

具体的には小さな鮭おにぎりや卵サンド、プリンやカステラ、アイスクリームといった乳製品や卵を使ったお菓子を選ぶと、カロリーとタンパク質の両方が補えます。

例えば卵サンド1/2個と牛乳150ml(コップ1杯分)、カステラひと切れと牛乳150mlといった組み合わせでは、それぞれ高齢者の食事1食分のおおよそ半分のカロリーを摂取する事ができます。

調理法の工夫によってカロリーを補う

食事の全体量が少ない場合や水分が多い食事によって摂取カロリーが減ってしまう場合は、間食によって1日当たりの摂取カロリーを増やす方法の他、調理の過程によってによって高カロリーな食品を取り入れ、食事量はそのままにカロリーアップをさせる事ができます。

具体的には、炒め煮、揚げ煮といった様に粉類や油を使用した調理法にしたり、固形物をミキサーにかける際にだし汁等の水分の代わりに市販されている高カロリー・高タンパクな栄養補助食品を加えるといった方法です。

粉類はご飯と同じ糖質によってカロリー補給ができ、油は糖質の倍以上のカロリーがあるため、少量でも効率的にカロリー補給ができます。

下の表に示している様に、主食がお粥の場合でも油や栄養補助食品を適量加える事で、カロリーアップが可能です。

・介護食のカロリーをアップさせる調理の工夫

調整前 調整後① 調整後② 参考値
お粥150g  約110kcal +油大匙1
約220kcal
+栄養調整食品20g
約190kcal
※ご飯150g
約250kcal
ムース食(魚) 鰈50g、だし汁、長芋使用

約60kcal
タンパク質10g

鰈50g、豆腐25g、マヨネーズ小匙1使用
約80kcal
タンパク質11g
鰈50g、栄養補助食品20ml、小麦粉小匙1使用
約120kcal
タンパク質12g
※煮魚
(鰈80g)
約80kcal
タンパク質13g

その人に必要なカロリーを正しく把握する

食事からの摂取カロリー不足を防ぐための対策の一つとして、その人に必要なカロリーを正しく把握し、自己流の健康法や思い込みによるカロリー制限を防ぐといった事があります。

その人に必要なカロリーは、平均体重当たりの基礎代謝量と「どれくらいの活動量があるか」といった身体活動係数によって求める事ができます。

ただし、持病があり通院している場合等においては、食事療法として医師の指示がある場合があるため、主治医の指示を守りましょう。

  • 標準体重=身長(m)×身長(m)×22(標準体重の体格指数)
  • 基礎代謝基準量(70歳以上):男性21.5 女性:20.7kcal/kg/日

この公式と係数を参考にすると、160cm、75歳の男性であれば基礎代謝量は約1210kcalとなり、身体活動レベルとして立位での移動や軽い運動をしている場合は

・1210×1.5(身体活動係数)=1815kcal

となります。小柄な女性や、身体活動が少ない人は基礎代謝量や身体活動レベル・係数が小さくなるため必要なカロリーは例と比較して少なくなります。

(参考:厚生労働省 eヘルスネット)

・身体活動レベルと高齢者(70歳以上)における身体活動係数

身体活動レベル  低い(I) ふつう(II) 高い(Ⅲ)
身体活動係数 1.3 1.5 1.7
日常生活の内容 生活の大部分が座位 座位中心であるが、移動や立位での作業、家事、軽いスポーツ等を行っている 移動や立位での作業が多い。またはスポーツ等を活発に行っている

・高齢者の食事1食分の食品別めやす量(1800kcal タンパク質約70gを想定)

食品の分類 主な食品 1食分の大まかな目安量
主食 ご飯、パン、麺 ・ご飯茶碗1膳(約180g)
・食パン 6枚切り2枚
・ゆでうどん 1袋
主菜 肉、魚、卵、豆腐 ・肉、魚 拳1つ分
・卵 1個
・豆腐 1/4丁(100g )
・納豆 (40g)
副菜 野菜、きのこ、こんにゃく、海藻 ・野菜100g以上が理想
・きのこ、こんにゃく、海藻はその人の噛む力、飲み込む力に合わせて使用

・その他、1日の食事や間食で必ず取り入れたい食品

食品の分類 主な食品 1日分のおおまかな目安量
乳製品 牛乳、ヨーグルト ・牛乳、ヨーグルト 約200ml
果物 生の果物 ・例:りんごなら1/2個
みかんなら2個程度
油脂類 油、バター、マヨネーズ等 ・大さじ1杯程度

(参考:農林水産省:食事バランスガイド 高齢者向け解説書)

高齢者の摂取カロリー不足を甘く見ず、健康長寿のためにしっかり対策を

厚生労働省の報告では、BMIという体格指数から「やせ」と判定される高齢者の割合は、男性で12.5%、女性19.6%にのぼっています。

やせの状態は、単に身長と比較して体重が少ないという状態ではなく、筋肉量の減少や血中のタンパク質(アルブミン)の減少等、全身の栄養状態の悪化をきたしている場合も多くあります。

高齢者がやせてしまう理由として、生命維持や身体活動によって消費されるカロリーに対し、摂取するカロリーが不足している状態が続くと体脂肪の減少や筋肉量の減少が起こる事が要因の一つとなります。

高齢者の摂取カロリー不足の背景には年齢による身体的変化や食形態の変化、食に対する認識等様々な事があり、原因に対しての対策が必要です。

食事からの摂取カロリー不足への対策として、食欲不振等によって食事の全体量が減る事や水分量が多い食事によってで摂取カロリー不足になる場合には間食を取り入れたり調理の過程で高カロリーな食品を使用する、自己流の健康法や食に対する思い込みによる摂取カロリー不足を防ぐためにはその人の性別や標準体重、身体活動レベルから必要なカロリーを正しく把握する事が大切です。

>oharu(おはる)

oharu(おはる)

自身のスポーツ経験から管理栄養士を志し、大学卒業後総合病院の管理栄養士として8年勤務する中で高齢者の栄養サポートやがん患者に対する緩和ケア等のチーム医療にも参加。現在は幅広い年齢層を対象に予防医療の分野で活動中。

【所有資格】・管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・病態栄養専門管理栄養士・がん病態栄養専門管理栄養士