高齢者の食事量、これで大丈夫!?食事摂取量の目安の基準を管理栄養士が解説!

高齢になると活動量の低下や消化機能の低下等で食が細くなる人は多くいます。

しかし近年、高齢者の栄養不足による弊害について多くの専門家が警鐘を鳴らし、各メディアでも取り上げられる様になりました。

この様な事もあり自宅介護をする人の多くは自宅にいる高齢者の食事量が適量であるか不安を抱え、高齢者の適正な食事量について多くの介護者がインターネット等で情報を求めている事が分かります。

また、食事摂取量の目安や必要な栄養量の基準について正しい情報を介護者が知る事ができれば、日々の食事を高齢者の健康の維持・増進に繋げる事ができます。

今回本記事では、病院勤務の中で多くの高齢者の栄養療法に携わった管理栄養士が、高齢者における食事摂取量の目安の考え方や必要な栄養量がどの様に計算されているか、分かりやすく解説していきます。

高齢者の食事摂取量の目安や必要な栄養量はこの様に考える!

高齢者の食事摂取量の目安や必要な栄養量はこの様に考える!

高齢者の食事摂取量の目安や必要な栄養量はその人の体格や普段の活動量によって個人差があります。

よって、食事摂取量の目安や必要な栄養量はその人に合わせて考える必要性があります。

ここでは、食事摂取量の目安や必要な栄養量を考える際のポイントについてお伝えします。

まずはその人の標準体重あたりの基礎代謝量を算出する

必要エネルギー量と聞くと、身体を動かすために必要なエネルギーを想像する人も多いでしょう。

しかし人間は、心臓の拍動や呼吸、体温の調節といった生命活動にも当然エネルギーが必要です。

このエネルギー量を基礎代謝量といい、その人が普段の生活を送るために必要エネルギーを考える際の土台になります。

一般的に必要エネルギーを考える際の基礎代謝量はその人の身長における標準体重に年齢や性別で異なる基礎代謝基準量をかけて求めます。

たとえば、身長160cmの75歳の男性であれば、標準体重は

1.6m×1.6m×22=56.3kg

となり、基礎代謝基準量をかけると

56.3kg×21.5kcal/kg/日=約1210kcal

となります。

この人の場合は生命活動のために最低限このエネルギーが必要となり、普段の活動量によって更に必要エネルギーは増えます。

※標準体重=身長(m)×身長(m)×22
※基礎代謝基準量(70歳以上):男性21.5 女性:20.7kcal/kg/日

(参考:厚生労働省 eヘルスネット

身体活動を加味し、必要エネルギーを計算する

必要エネルギーを考える際に考慮する事が欠かせないのが、「その人が普段どれくらいの身体活動があるか」といった事です。

身体活動の程度は「身体活動レベル」として三段階で表され、「身体活動係数」という係数を基礎代謝量にかける事で身体活動を含めた必要エネルギー量を求める事ができます。

下の表にお示ししている様に、70歳以上では、生活の大部分が座位の低い身体活動レベルの身体活動係数は1.3、立位の作業や軽いスポーツを行う等ふつうの身体活動レベルでは1.5、スポーツを活発に行う等の高い身体活動レベルでは1.7となります。

前項で挙げた例て身体活動を含めた必要エネルギー量を求めてみると、

基礎代謝量=56.3×21.5kcal/kg/日=1210kcal

身体活動レベルふつうの場合

1210×1.5(身体活動係数)=1815kcal

となります。

身長が低く基礎代謝基準量が小さい女性や、身体活動が少ない人は必要エネルギー量が少なくなります。

・身体活動レベル(70歳以上)

身体活動レベル  低い(I) ふつう(II) 高い(Ⅲ)
身体活動係数  1.3  1.5 1.7
日常生活の内容 生活の大部分が座位 座位中心であるが、移動や立位での作業、家事、軽いスポーツ等を行っている 移動や立位での作業が多い。またはスポーツ等を活発に行っている

エネルギー産生栄養素バランスや体重から必要なタンパク質量を計算する

高齢者の健康を維持・増進するために大切な事の一つとして、「タンパク質を不足しない様に摂る」といった事も挙げられます。

タンパク質が不足すると、筋肉量の減少や免疫力の低下を引き起こし、低栄養状態に直結してしまう事が多いです。

そのため、高齢者こそその人に必要なタンパク質量を正しく判断し、食事に取り入れていく事が大切です。

タンパク質の必要量を求めるには、必要エネルギーに対して理想的なタンパク質の割合から算出する方法や、その人の活動量に応じた標準体重1kgあたりのタンパク質必要量をかけて算出する方法があります。

必要エネルギーに対して、タンパク質や脂質、炭水化物のそれぞれが不足なく、生活習慣を予防する事が期待できる理想的な比率を表したものを「エネルギー産生栄養素バランス」といい、高齢者におけるタンパク質の必要量は全体のエネルギーに対して15〜20%とされています。

また、標準体重1kgあたりの必要なタンパク質量は、活動レベルが低い人でも0.8〜1.0g/kg、趣味でスポーツを楽しむ程度の活動量がある場合は1.2〜1.5g/kg程になります。

ここでまた前項の例に当てはめて考えると、エネルギー産生栄養素バランスを使った考え方では

1800×(0.15〜0.2)÷4=67.5〜90g

体重から求める方法では

56×(1.2〜1.5)=67.2〜84g

となります。

体重から必要タンパク質量を求める場合、一般的にはその人の身長からみた標準体重に補正して考えます。

標準体重は、身長m×身長m×22(標準体重のBMI)で算出する事ができます。

※持病の治療をしている場合等は、必要栄養量の基準はこの限りではありません。主治医の指示を守りましょう。

(参考:厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020 たんぱく質 P115〜116
(参考:厚生労働省 エネルギー産生栄養素バランス

実際に高齢者に必要な食事量はどれくらい?栄養不足を防ぐには!?

実際に高齢者に必要な食事量はどれくらい?栄養不足を防ぐには!?

前章では、高齢者に必要な栄養量の求め方についてお伝えしました。

しかし、例えば「必要なエネルギーは1800kcal」と言われても、一体何をどれ位食べてもらったら良いのか目安が分からないといった人がほとんどでしょう。

そこで、まずはここまで例にも挙げてきた1800kcal、タンパク質70gを摂取するために必要な食品について下の表にお示ししました。

しかし、高齢者は食欲の低下や身体機能の低下等によって思う様に食事を摂る事ができないといった人も多いものです。

ここでは、実際に高齢者に必要な食事量の目安や栄養不足を防ぐ食事の工夫についてお伝えします。

・高齢者の食事1食分の食品別めやす量(1800kcal タンパク質約70gを想定)

食品の分類 主な食品 1食分の大まかな目安量
主食 ご飯、パン、麺 ・ご飯茶碗1膳(約180g)
・食パン 6枚切り2枚
・ゆでうどん 1袋
主食 肉、魚、卵、豆腐 ・肉、魚 拳1つ分
・卵 1個
・豆腐 1/4丁(100g )
・納豆 (40g)
副菜  野菜、きのこ、こんにゃく、海藻 ・野菜100g以上が理想
・きのこ、こんにゃく、海藻はその人の噛む力、飲み込む力に合わせて使用

・その他、1日の食事や間食で必ず取り入れたい食品

食品の分類 主な食品  1日分のおおまかな目安量
乳製品 牛乳、ヨーグルト ・牛乳、ヨーグルト 約200ml
果物 生の果物 例:りんごなら1/2個
みかんなら2個程度
油脂類 油、バター、マヨネーズ等 ・大さじ1杯程度

(参考:農林水産省:食事バランスガイド 高齢者向け解説書

その人の噛む力や飲み込む力に合わせた食形態にする

高齢者が「思う様に食事が食べられない」理由の一つとして、食べ物を噛む力や飲み込む力の低下が挙げられます。

高齢者だからといって一律に軟らかい食事にしてしまうのは食べる楽しみが損なわれる事も多いので禁物ですが、例えば普段の食事において野菜や肉類等よく噛んで食べる必要がある食品が残りがちであるといった場合は、食材の選び方や調理の工夫によって食事の形態をその人の噛む力や飲み込む力に合ったものにする事が大切です。

噛む力が弱くなったからといって通常の食事を細かく刻んだり、さらさらとした粘度の低い汁物やお茶をそのまま食卓に出すのはかえって食べにくかったり、飲み込んだものが誤って気管に入る誤嚥に繋がる事もあるので、下の表も参考に、噛む力や飲み込む力が低下した高齢者にとって食べにくい食品は食べやすい食品に代替えしたり、野菜は繊維を断ち切るよ様に切りよく煮込む、汁物にはとろみを付ける等といった適切な対策が必要です。

・高齢者にとって食べにくい食品

形状  食品・料理例
硬い野菜 生野菜、サラダ等
繊維が残る野菜 たけのこ、ごぼう、ふき、セロリ等
スポンジ状でぼそぼそするもの がんもどき、油揚げ高野豆腐等
弾力が強いもの こんにゃく、きのこ等
長さがあるもの 麺類等
酸っぱいもの  酢の物、レモン等
さらさらした水分 味噌汁、すまし汁、お茶、水等
口の中に張り付くもの のり、わかめ、餅等

  ・高齢者にとって食べやすい食材

形状 食品・料理例
ミンチ状で、まとまりのあるもの ハンバーグ、つくね等
 ゼリー状のもの ゼリー、水羊羹等
プリン状のもの プリン、具なし茶碗蒸し、卵豆腐、ムース等
ポタージュ-ルウ状のもの カレー、シチュー、ポタージュスープ等
ピューレ状のもの 野菜、果物のピューレ等
乳化されたもの ヨーグルト、アイスクリーム等
軟らかい主食 お粥、パン粥、軟飯、煮込みうどん等
軟らかい野菜 大根、人参、芋類
葉物野菜の葉先
食品 調理法
米、パン、麺類 ・米は水分を多くして炊く
・パンは卵液やスープ等に浸す(フレンチトースト等)
・麺類は短く切って煮込む、あんをかける
肉、魚 ・パイン、キウイ、麹等肉を柔らかくする働きがある食品を使った漬けダレに漬け込む
・挽肉を使用したりミキサーにかける場合は油脂や卵、芋類等のつなぎを加えて加熱する
・塩は調理する直前にする
野菜 ・繊維に対して垂直に、断ち切る様に切る
・柔らかく煮る、蒸す
・必要に応じてピューレ状にし、固める

食事量が少ない場合は間食を取り入れる

冒頭でもお伝えした様に、高齢になると活動量が低下する事や食べ物の消化・吸収機能が低下する事で食が細くなり、食事だけでは必要な栄養量を充分に摂取するのが難しいといったケースも多くあります。

その様な場合には、食事の他に間食を取り入れ、食事だけでは不足してしまうエネルギーを補うといった方法があります。

また、プリンやアイスクリーム、カステラ等の乳製品や卵を使用したおやつを選んだり、間食を摂る際に牛乳を添える事でエネルギーの他にタンパク質を補う事もでき、より効果的な栄養補助をする事ができます。

タンパク質や脂質を含む食品を主食や副菜にも取り入れる

前項でお伝えした様に、高齢者になると食が細くなる人が多くいます。

この場合、先にお伝えした様に間食を取り入れる事で栄養を補うといった方法もありますが、食事の献立を工夫する事でもエネルギーやタンパク質を効果的に補う事も期待できます。

その方法は、チャーハン等の様に主食にタンパク源と油を加えたメニューにしたり、汁物に豆腐とごま油を加える等副菜にタンパク源や油を加えるといった方法です。

食が細くなった高齢者にとっては量が多く感じるご飯やボリューム感のある肉や魚は負担に感じてしまう人も多いものですが、良質なタンパク質を多く含む肉、魚、卵、大豆製品や少量でも多くのエネルギーを補給できる油を食事の献立の随所に使用する事で、食事そのものの栄養価を上げる事も可能です。

高齢者に必要な栄養が簡単に摂取できる高齢者向け宅配弁当もおすすめ

高齢者に必要な栄養が簡単に摂取できる高齢者向け宅配弁当もおすすめ

ここまでは高齢者の食事摂取量の目安や必要栄養量の基準、栄養不足を防ぐための食事の工夫についてお伝えしてきました。

しかし、食事は1日3回、毎日続き、栄養のバランスや食形態の配慮が必要です。

これは、食事を用意する人にとっても楽な事ではありません。特に介護者が仕事で日中家を空ける場合等に食事の用意をどうしたら良いかという相談はインターネット上でも多く寄せられています。

その様な場合におすすめなのが、最近各社が展開している「高齢者向け宅配弁当サービス」です。

このサービスで提供される弁当の献立は多くの場合管理栄養士が監修し、高齢者に必要な平均的な栄養量が摂取できる様に計算されています。

また、食形態も普通食から軟らかいおかずのもの、ムース食といった様に多様であるため、食形態の調節が必要な場合にもその人に合った形態のものを選べば、自宅で手を加える事なく安全な食事を提供する事ができます。

弁当は冷凍で届くので、冷凍保存が可能で食べたい時に解凍するだけの手軽さも魅力です。

高齢者の食事量は摂取量の目安や基準値も含めて適正か判断しよう

近年、高齢者の栄養不足による弊害について多くの専門家が警鐘を鳴らし、各メディアでも取り上げられる様になりました。

この様な背景もあり、自宅介護をする人の多くは自宅にいる高齢者の食事量が適量であるか不安を抱え、インターネット上の介護相談等でも高齢者の適正な食事量について多くの介護者が情報を求めている事が分かります。

また、食事摂取量の目安や必要な栄養量の基準について正しい情報を介護者が知る事ができれば、日々の食事を高齢者の健康の維持・増進に繋げる事ができます。

高齢者の食事量の目安を考える際に重要になるのが、その人にとって必要なエネルギーやタンパク質量の基準値を知る事が挙げられます。

必要なエネルギーは年齢や性別、普段の活動量によって、タンパク質は全体的な栄養素のバランスや、その人の体重、活動量等を考慮して求める事が大切です。

しかし、高齢になると食が細くなる事や噛む力や飲み込む力の低下によって必要な栄養量が思うように摂る事ができないといったケースも多くあるため、間食を取り入れる事や主食や副菜にもエネルギーやタンパク質を補える食品を取り入れるといった工夫や、その人の噛む力や飲み込む力に合った食形態にする事も必要です。

介護者が不在の場合等には高齢者向け宅配弁当サービスがおすすめです。

解凍して食べたい時にすぐ食べられる便利さだけではなく、栄養価計算された献立で、1食あたりの高齢者に必要な標準的な栄養量を満たす事ができる安心感もあります。

>oharu(おはる)

oharu(おはる)

自身のスポーツ経験から管理栄養士を志し、大学卒業後総合病院の管理栄養士として8年勤務する中で高齢者の栄養サポートやがん患者に対する緩和ケア等のチーム医療にも参加。現在は幅広い年齢層を対象に予防医療の分野で活動中。

【所有資格】・管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・病態栄養専門管理栄養士・がん病態栄養専門管理栄養士