高齢者の自炊、その問題とは!?安全な食生活を送るための対策もご紹介!

国内の民間調査によると、60歳以上の高齢者は食事を自炊する人が女性で9割、男性でも2割に及ぶといわれています。

また、調理をする事で思考や手先を使う機会が増え、認知機能の維持が期待できるといった報告もあり、高齢者の自炊には健康上のメリットもあります。

しかし、調理には献立を考える、包丁を使って食材を下処理する、火を使い調理をするといった多くの工程が必要となり、加齢に伴う身体機能や認知機能の低下により思う様に自炊ができないといった場合も増えてきます。

その場合、対策をせずに無理をして自炊を続ける事でケガや栄養バランスの偏り、火災等の事故にも繋がる事があるため、高齢者でも使いやすい調理器具の利用や手軽にタンパク質や野菜が摂取できる缶詰や冷凍野菜の利用、火を使った調理が不要な高齢者向け宅配弁当サービスの利用といった対策が必要です。

今回本記事では、高齢者の自炊においてよく聞かれる問題と問題を解決し高齢者が健康的で安全な食生活を送るための対策をお伝えします。

高齢者の自炊においてよく聞かれる問題

高齢になると身体機能や認知機能の低下により、調理についても様々な問題を抱える事が多くなります。

よく聞かれるのは、手元の筋力や足腰が弱る事によって調理器具が使いにくくなったり長時間立って調理ができない、調理がおっくうになり栄養のバランスが偏りやすくなる、認知機能の低下によって火の元の管理が不十分になりやすいといった問題です。

本章では、これらの問題が高齢者の健康や生活の安全に及ぼす影響についてお伝えします。

手元の筋力や足腰が弱くなり、包丁を使う事や立って調理する事が難しくなる

加齢による身体機能の変化として、握力の低下や指先の筋力低下、足腰が弱くなるといった変化が起こりやすくなります。

そのため、包丁を上手く握れない、硬い食材を切る事ができない、食材を小さく切る事ができないといった問題が生じる事もあります。

また、足腰が弱くなる事で長時間立って調理をする事や、食後の後片付けが困難になる事も多くあります。

調理器具を上手く使えない事は指を切る等の怪我に繋がる他、食材を適切な大きさにする事ができないため料理の食べにくさにも繋がります。

また、足腰に痛みや疲れを感じたまま無理をして調理をする事で症状が増強し調理自体が難しくなったり、調理の時間に嫌悪感を覚え自炊への意欲低下を引き起こす事もあるため、加齢による身体機能の低下がある場合も快適に調理ができる環境整備が必要です。

献立を考える事や調理がおっくうになり、栄養のバランスが偏りやすい

自炊をする際には献立を考えた上での調理といった工程があり、加齢に伴って毎日の献立を考える事がおっくうになったり、前項でもお伝えした様に身体機能の低下によって調理に嫌悪感を覚える高齢者も少なくありません。

そのため、献立が簡素化され、ご飯と味噌汁の様な品数の少ない献立になりやすくなったり、下処理や加熱調理が必要な野菜や肉、魚といった食材の利用がなくなる等、栄養のバランスに偏りが生じやすくなります。

その結果、1日の総摂取カロリーやタンパク質、ビタミン・ミネラル不足による低栄養状態に繋がりやすくなります。

低栄養状態は筋肉量の低下を引き起こし活動量の減少、食欲の低下といった悪循環に繋がり、健康状態の低下のみならず認知機能の低下の原因となる場合もあるため、買い物や食材の組み合わせの助言といった介入が必要でしょう。

認知機能の状況によっては火の元の管理が不十分になる事もある

加熱調理の際に火を使う事は日常的な事ですが、火を消す事を忘れたり空焚きをしてしまう等火の元の管理が不十分な状態となると火災に直結する事があります。

高齢者の自炊において、火の元の管理に関する不安は、インターネット上でも多く相談されている問題の一つです。

加齢に伴う自然な現象でもある認知機能の低下により火の元の管理が不十分となる場合がありますが、自身の認知機能の低下や火の元の管理が不十分となっている事実については本人は認識していない場合も多くあります。

火災に関する危険性を伝え、合わせて火を使わずに食べられる便利な食品の利用の提案等で安全性を高める事が重要です。

高齢者の自炊における問題を解決し、安全な食生活を送るための対策は!?

高齢者の自炊における問題を解決し、安全な食生活を送るための対策は!?

前章では、高齢者の自炊においてよく聞かれる問題についてお伝えしました。

それらの問題は高齢者の健康や生活の安全に影響を及ぼすため、例えば手の力がなくても小回りが利くキッチンバサミ等の調理器具や座ったまま調理できる高さの椅子を用意し身体機能をカバーする事や、下処理要らずの缶詰や冷凍野菜で調理がおっくうな場合にも栄養のバランスに配慮する、火の元の管理が不安な場合にはレンジ加熱で食事の用意を完了させられる高齢者向け宅配弁当サービスの利用をするといった対策が重要です。

本章では高齢者の自炊における問題を解決し、安全な食生活を送るための対策についてお伝えします。

キッチンバサミや椅子等を使用し、身体機能をカバーする

高齢者の自炊において、手元の筋力が低下し包丁を上手く使えないといった場合や足腰が弱くなり長時間立って調理する事が難しい場合は、包丁の代わりにキッチンバサミを利用したり、座って調理ができる様キッチン用の椅子を設置する事で身体機能の低下に伴う不自由さをカバーできる可能性があります。

キッチンバサミは包丁の様に食材を押して切る必要が無く、葉物野菜をはじめ生の肉や刺身用の魚等を食べやすい大きさに簡単にカットする事ができます。

軽量タイプや持ち手がゴムで加工される等滑りにくいものが高齢者にも使いやすくおすすめです。

ただし、キッチンバサミのデメリットとして、洗浄・消毒が不十分となると細菌が繁殖し不衛生になりやすいといった点があります。

そのため、分解して洗浄・キッチンハイター等で消毒をする事が難しい高齢者の場合は、キッチンバサミでの生肉、生魚の下処理は避け、野菜や油揚げ、加熱調理済みの肉類や麺類といった調理済みの食品への利用に限定するのが無難です。

また、キッチン用の椅子については台所の高さに合わせて高さ調節ができるものや、キャリー付きのものが移動に便利ですが、介護用品の通販サイトでの価格帯は1万円台〜5万円台と幅広く、高価格帯であるというデメリットもあります。

そのため、後にご紹介する高齢者向け宅配弁当サービスの利用等、長時間キッチンに滞在する必要性のない方法の導入との検討も視野に入れましょう。

キッチンバサミを使った簡単メニュー

〜小松菜としいたけの卵とじ 材料(1人分)〜
  • 小松菜 1株
  • しいたけ 1枚
  • 溶き卵 1個分
  • 水 100ml
  • ほんだし 小匙1/3
  • 醤油、みりん各小匙1.5
作り方
  1. 小松菜は洗い、キッチンバサミで2cm程度の長さに切る。
  2. しいたけもキッチンバサミで軸を取り、薄くカットする。
  3. 器に①、②を並べ、水、ほんだし、醤油、みりんを混ぜた液と溶き卵を注ぐ。
  4. 器にふんわりとラップをし、600Wのレンジで1分加熱する。

肉、魚の缶詰や冷凍野菜を活用し、使用食材の偏りを防ぐ

加熱調理が必要な肉、魚や、洗う、切る、加熱するといった工程が必要な場合が多い野菜の調理がおっくうになり、食事内容に偏りが出てしまう事を防ぐには加熱の必要がない肉、魚な調理済み缶詰や洗って食べやすい大きさにカットされ、加熱調理された状態で冷凍された冷凍野菜を利用するのがおすすめです。

缶詰や冷凍野菜は保存も便利なので、スーパーが近くにない、足腰が弱いといった理由で買い物が困難な場合にも食材の宅配等を利用する等してまとめ買いをしても在庫管理がしやすい事も魅力の一つです。

栄養バランスを整えるためには、ご飯等の主食に加え、例えば鯖の水煮缶であれば1/2缶程度、焼き鳥缶であれば1缶程度使用し、冷凍野菜は汁物や温野菜、煮物等にして1〜2皿分取り入れましょう。

冷凍野菜は火を通してあるので、大きくて食べにくい場合でも解凍後、包丁を使わなくてもフォークの背等で簡単に潰す事も可能です。

魚や肉の缶詰を使用する際に注意したいのが、持病等により食事の塩分制限が必要な場合です。

1日の食塩摂取量は日本人の食事摂取基準では8g以下が望ましいとされていますが、缶詰の1食当たりの塩分量は、さば水煮缶で約1g、焼き鳥缶で約2g程度です。

そのため、塩分制限の程度や調理法にもよりますが、缶詰の利用によって塩分のコントロールが難しくなる場合もあるのです。

持病等により食事の制限がある場合は、次にご紹介する高齢者向け宅配弁当の利用も便利です。

缶詰・冷凍野菜を使った簡単メニュー

〜鯖缶と野菜のトマト煮〜 材料(1人分)
  • 鯖水煮缶 1/2缶
  • カットトマト缶 1/4缶
  • 味噌 小匙2
  • ブロッコリー、揚げ茄子等お好みの冷凍野菜 適量
作り方
  • トマト缶と味噌は混ぜておく。
  • 鯖水煮缶は食べやすい大きさにほぐす。
  • 耐熱容器に②と冷凍野菜を並べ、①をかける。
  • ふんわりとラップをして、600Wのレンジで3分加熱する。

(約250kcal 塩分2.4g)

高齢者向け宅配弁当サービスなら火を使った調理が不要で安心

高齢者の自炊において火の不始末による事故を防ぐには、ガス等の火を使わずにレンジで調理をするといった事も方法の一つとなります。

しかし、レンジで調理をする場合でもレシピを覚える必要があり、調理に不慣れな男性等には特にハードルが高くなってしまいます。

その様な場合に便利なのが、最近各社が展開する高齢者向け宅配弁当サービスです。

高齢者宅配弁当は冷凍の状態で届き、レンジで解凍調理するだけで食事が完成するため火の元の不始末の危険性を軽減する事ができます。

また、管理栄養士が献立を監修しているため献立を考える手間要らずでバランスの良い食事が叶います。

通常のラインナップに加え、おかずが歯茎で潰せる程度の軟かさに調理されたタイプやカロリーや塩分、タンパク質等が調整されたタイプもあり、咀嚼・嚥下に不安がある場合や前項でお伝えした様に持病等で食事内容に制限がある場合にもその人の状況にフィットした食生活を送る事が可能です。

高齢者に宅配弁当の利用を勧める場合、端的に「火の元の管理が心配だから」と伝えてしまうと高齢者の自尊心を傷つけてしまう場合もあるため、「献立を考える手間がない」「持病があっても食事管理が簡単にできる」といったメリットと共に、「火を使わずに調理できる」という事も合わせて伝えると良いでしょう。

高齢者向け宅配弁当サービスを利用する際の注意点として、注文の手続き等は電話やインターネットで行う必要があるため、高齢者が一人暮らしである場合には注文間違い等を防ぐためには別居する家族が手続きを行う等のサポートが必要です。

更に、一度家族と一緒にいる時に実際にレンジで冷凍の弁当をレンジ調理し、レンジの操作や調理に必要なワット数や時間等も確認すると、レンジ調理の失敗も減らす事ができます。

高齢者の自炊は危険が潜む場合も。便利な食材やサービスを利用して安全に!

高齢者の自炊において問題としてよく聞かれるのは、手元の筋力や足腰が弱くなる事により包丁が思う様に使えない、長時間立って調理をするのが難しい、使用する食材や栄養が偏りやすい、火の元の管理が不十分になりやすい、といった3点です。

包丁を思う様に使えない事で怪我や食材の食べにくさに繋がる事があり、立って調理が難しい状態は調理に対する嫌悪感に繋がります。

また、使用する食材が偏り総摂取カロリーや栄養不足が続くと、低栄養状態に移行する危険性があり、火の元の不始末は火災に直結します。

これらの事を踏まえ、高齢者の自炊に関する問題は、できるだけ早急な対策が必要です。

対策として、包丁が上手く使えない場合にはキッチンバサミを使う、足腰の機能カバーするためにキッチン用の椅子を使うといった方法があります。

加熱調理や下処理がおっくうちなり、使用する食材が偏る事を防ぐには、缶詰や冷凍食品を活用するのもおすすめです。

最近各社が展開する高齢者向け宅配弁当サービスは火を使わずにバランスの良い食事が食べられるので、火の元の不始末の危険性を軽減する事ができます。

この様に、高齢になると身体機能や認知機能の低下により自炊には危険を伴う事がありますが、便利な道具、食材、サービスによって安全に対策する事ができるのです。

>oharu(おはる)

oharu(おはる)

自身のスポーツ経験から管理栄養士を志し、大学卒業後総合病院の管理栄養士として8年勤務する中で高齢者の栄養サポートやがん患者に対する緩和ケア等のチーム医療にも参加。現在は幅広い年齢層を対象に予防医療の分野で活動中。

【所有資格】・管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・病態栄養専門管理栄養士・がん病態栄養専門管理栄養士