災害時、高齢者の食事はどうする!?よくある問題と対処法をご紹介!

地震や台風等、自然災害は誰しも遭遇する可能性があり、高齢者や高齢者がいる世帯ももちろん例外ではありません。

また、最近では簡単に調理できる介護食のレシピや便利な配食サービス等、インターネット上では普段の高齢者の食事に関する情報は充実していますが、災害時には高齢者の多くが避難所等で提供された食事の形態や内容が自身の身体状況に合わない、普段とは違う環境が食行動に影響し、健康状態が悪化しやすいといった事実を記した記事も見受けられ、災害時における高齢者の食事には、多くの問題がある事が分かります。

災害から生き抜く事ができても、その後の食生活が適切でなければ、健康状態の悪化により命を落とすといった痛ましい結果にも繋がりかねません。

そこで今回本記事では、災害時に高齢者が抱える食事の問題や、それに対する対処法をお伝えします。

災害時における高齢者の食事の問題や対処法を知る事で、普段の災害対策や非常食の準備をより効果的に行う事ができますよ。

災害時に高齢者が抱える食事の問題

災害時に高齢者が抱える食事の問題

高齢者は噛む力や飲み込む力の低下や持病がある人の割合が増えるといった身体的状況により、避難所等での食事に問題を抱えやすいと言えます。

また、避難所生活等による環境の変化が食行動に影響を与えやすく、健康状態の悪化に繋がる事も少なくありません。

ここでは、災害時によくある、高齢者が抱える食事の問題についてお伝えします。

避難所等で提供された食事の食形態が合わず食べられない

災害時に避難所等で提供される食事は、必ずしも高齢者にとって食べやすい形態であるとは限りません。

実際にインターネット上には東日本大震災の際、避難所で提供されたおにぎり等の食事が、高齢者にとっては飲み込みにくく、そのままでは食べる事ができなかったという体験談も高齢者が多くいたという記載もあります。

また、普段は入れ歯を使って通常のおかずを噛む事ができていても、災害時には入れ歯の破損や手入れができないといった理由で入れ歯を使う事ができなくなり、歯が無い状態で食事をしなければならなくなる可能性もあります。

しかし、食形態が合わないからといって「自分が食べられるもの」だけ食べていると、栄養のバランスが崩れ、低栄養状態の原因となります。

提供された食事や非常食の塩分、糖分等で持病や健康状態が悪化しやすい

高齢になると持病の食事療法や健康維持のため、普段から塩分を控えたり菓子類や果物の缶詰といった砂糖を使った加工品の摂取を控えるといった事に配慮している人も少なくありません。

しかし、災害時に避難所で提供される食品は塩分や糖分を多く含むものも多く、家庭で備蓄している非常食も保存性を高めるために塩や砂糖を多く使用して加工しているものも多くあります。

そのため、避難生活を長く続ける事で塩分の摂り過ぎにより血圧が上がりやすくなったり、糖分の摂り過ぎにより血糖値が上がりやすくなり、持病の悪化や避難生活を送る中で病気を発症し、命を落とすケースも報告されています。

水分を摂りたがらず、水分不足に陥りやすい

避難生活で高齢者に限らず陥りやすいのが、水分不足です。

その理由として、数が少なく必ずしも衛生状態が良いとも限らないトイレに行く事への抵抗感や、飲料用の水も生活用水確保のため節約を余儀なくされるといった事があります。

また、食料不足や被災によるストレス等で食事摂取量が減少する事でも水分の摂取量は減少します。

水分摂取量が不足すると、便秘の他脱水症状による体調不良や意識障害の原因となったり、血液中に血栓を作りやすくなる事で心臓や脳の血管が詰まり、命に関わる事もあります。

食事内容の偏りが起こりやすく、栄養状態が悪化しやすい

避難所で提供される食事の内容は、特に災害発生から間もない時期にはパンやおにぎり等の炭水化物に偏りやすく、主に野菜等に含まれるビタミン・ミネラルや食物繊維が不足する傾向にあります。

また、炊き出し等の一皿料理が続く事でも、平常時と比較して肉や魚、卵や大豆製品等のタンパク源は充分量を摂取しにくくなります。

実際に避難所生活を経験した人からも、菓子パンやおにぎりの提供が続き、食物繊維不足により便秘等の症状に悩まされたという声がインターネットの記事に寄せられています。

食物繊維不足による便秘は食欲自体を減退させ食事摂取量が減少する原因となる他、ビタミン・ミネラル不足により栄養素の吸収、利用が円滑に行われず、栄養状態が悪化しやすくなります。

また、タンパク質不足は筋肉量の減少や免疫力の低下を引き起こし、更に活動性を低下させる事で食欲の低下を助長するといった悪循環に繋がります。

(参考:厚生労働省 避難生活で生じる健康問題を予防するための栄養・食生活について

災害時に高齢者が抱える食事の問題への対処法

災害時に高齢者が抱える食事の問題への対処法

前章では、災害時に高齢者が抱える食事の問題はどの様なものかについてお伝えしてきました。

高齢者が災害時を生き抜くためには、食事における問題への対処法や、それを踏まえた日頃の備えが必要です。

ここでは、災害時に高齢者が抱える食事の問題への対処法についてのヒントお伝えします。

レトルトパウチの介護食を備えたり、即席で軟かく調理する方法を知っておく

災害時に避難生活を余儀なくする際、避難所で提供される食事の形態が合わない可能性がある場合には、非常食としてレトルトパウチのお粥や介護食を防災バッグ等に入れておくといった対処法があります。

また、提供されたおにぎりや衣が付いた硬いフライ等は汁物や缶詰の汁等と一緒にポリ袋に入れ、湯せんで加熱する事で軟かく調理する事ができます。

また、パン等のパサつく食品は、牛乳やスープに浸して食べる事で食べやすくなります。

前章でお伝えした様に、普段入れ歯を使って食事をしている場合、災害時には入れ歯が使えなくなる可能性もあるため、現在は通常のおかずを食べている場合でも軟かく食べやすい非常食の備えや、即席で食品を軟かく調理する方法を知っておく事も大切です。

そうする事で、災害時でもその人にとって食べやすい食品を選択する事ができたり、その場で食べやすい形態へ調理を可能にする事で食事摂取量の減少や食事内容の偏りによる低栄養のリスクを減らす事ができます。

塩分や栄養成分に配慮して非常食の選び方を工夫する

災害時の食生活によって持病の悪化や健康状況の悪化を防ぐためには、非常用の保存食を備える際に例えば塩分等の栄養成分に配慮して商品を選ぶ事が必要です。

塩分に関しては、例えば魚の缶詰であれば調味料を加えて味付けしたものよりも水煮を選ぶ事で塩分がやや控えめになります。

また、通常常温保存が不可能な豆腐も、充填タイプのものであれば常温で長期間保存が可能であり、軟かく食べやすいため高齢者の保存食としても重宝します。

下の表にもお示ししていますが、充填豆腐であれば醤油をかけて食べても魚の缶詰の1/3以下の塩分に抑える事ができます。

また、果物の缶詰はシロップを良くきって食べる事や、提供された菓子類や菓子パン等は一度にたくさん食べず、防災バッグに持参した保存食と組み合わせて食べるといった工夫によって、糖分の摂り過ぎを防ぐ事も可能です。

保存食品の塩分含有量

さばの味噌煮(1缶200g) さばの水煮(1缶200g) 充填豆腐(1パック300g)+醤油小匙1/2
塩分 2.2g 1.8g 0.4g

ゼリー飲料や汁物等で、こまめな水分摂取をすすめる

高齢者が1日に必要とする水分量は約2l〜2.5lで、そのうち1l程は食事から摂取されますが、1l〜1.5lは飲水による水分摂取が必要です。

しかし、前章でお伝えした様に飲水による水分摂取は「トイレが近くなる」等といった理由で敬遠する高齢者も少なくありません。

飲水による水分摂取のポイントとして、1回に飲む量を200ml以下の少量にし、頻度を増やして摂取する事で身体に水分の吸収を促すため、トイレの回数が急激に増える事を防ぐ事は可能です。

それでも水分摂取がすすまない場合は、ゼリー飲料や味噌汁、飲料タイプの栄養補助食品等水分を多く含む食品を食事や間食に1品として追加する事で飲水と比較して抵抗感が少なく水分補給ができます。

下の表に示したもの以外にも、果物や果物の缶詰(果肉部分)も重量の80%以上の水分が含まれているため、水分補給が可能です。

食後のデザート等で取り入れるのも良いですね。

※持病があり医師から水分摂取量について指示を受けている場合は必要水分量はこの限りではありません。必ず医師の指示を守りましょう。

水分摂取に役立つ食品とその水分量

ゼリー飲料
(1パック180g)
 味噌汁
(お椀1杯150ml)
 栄養補助食品
(1パック125ml)
水分量 約150ml 約140ml 約90ml

少量でも高栄養な栄養補助食品で、バランス良く栄養を補う

災害が起こった直後等、避難所で提供される食品の内容に偏りがあり、栄養量や栄養バランスが心配…そんな時に備えておくと安心なのが、少量で高カロリー・高タンパクで、ビタミンやミネラルの補助も可能な栄養補助食品です。

製品によっては水溶性の食物繊維を含み、スムーズな排便や血糖値の急激な上昇に配慮したものもあります。

提供されたおにぎりやパン等と合わせて摂る事で、食事の内容が炭水化物に偏らず、低栄養状態の原因となるカロリー・タンパク質不足やビタミン・ミネラル不足の状態を防ぐ事ができます。

栄養補助食品は飲料タイプの他、ゼリータイプ等形態も数種類あるため、その人の飲み込みの状況に合った形態のものを選ぶ事ができます。

また、前項でお伝えした様に、高齢者が敬遠しがちな水分摂取の1つの手段としても役立ちます。

災害時こそ、高齢者の食事は食べやすさと栄養への配慮が必要。日頃から備えよう!

地震や台風等、自然災害は誰しも遭遇する可能性があり、高齢者や高齢者がいる世帯ももちろん例外ではありません。

しかし、災害時には高齢者の多くが避難所等で提供された食事の形態や内容が自身の身体状況に合わない、普段とは違う環境が食行動に影響し、健康状態が悪化しやすいといった事実を記した記事も見受けられ、災害時における高齢者の食事には、多くの問題がある事が分かります。

そのため、避難所生活や自宅避難生活を乗り越え、本当の意味で災害から生き抜くためには、日頃の備えとして災害時における高齢者の食事の問題点を把握し、いざという時のための対処法を知っておく事が大切です。

災害時における高齢者の食事の問題として、避難所で提供された食事の形態がその人の噛む力や飲み込む力に合わず、充分に食事を食べられない場合がある事や、提供された食事や持参した保存食の塩分や糖分によって健康状態が悪化してしまう可能性がある事、食事量の減少やトイレが近くなる事への抵抗感によって水分摂取量が減り、水分不足による身体状況の悪化が起こりやすい事、避難生活における食事内容の偏りによって、低栄養状態に繋がりやすい事等が挙げられます。

これらの問題への対処法として、レトルトパウチの介護食等普段その人が食べられる形態の保存食を備えておく事や、即席で食品を軟かく調理できる方法を知っておく事、保存食を自ら用意する際には塩分等の栄養成分に配慮して用意する事、飲水以外の方法での水分摂取に役立つ食品を知っておく事、提供される食品に限りがある場合の栄養補給にも役立つ、少量でも高栄養な栄養補助食品を備えておくといった方法があります。

ただし、これらの対処法もいざ災害が起こってからでは実践が難しいため、保存食等は日頃の備えとして準備しておく事が大切です。

>oharu(おはる)

oharu(おはる)

自身のスポーツ経験から管理栄養士を志し、大学卒業後総合病院の管理栄養士として8年勤務する中で高齢者の栄養サポートやがん患者に対する緩和ケア等のチーム医療にも参加。現在は幅広い年齢層を対象に予防医療の分野で活動中。

【所有資格】・管理栄養士・日本糖尿病療養指導士・病態栄養専門管理栄養士・がん病態栄養専門管理栄養士